2011年08月04日

下町ロケット ~ 池井戸 潤 + 違和感という第六感

その部品がなければ、ロケットは飛ばないんだ。

書籍情報

下町ロケット
下町ロケット
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池井戸 潤
小学館
売り上げランキング: 32


この本のツボは?

直木賞受賞で、にわかに注目されている作品。とってもハラハラ・ドキドキの
ビジネス小説だ。中小企業と銀行の関係、大企業と中小企業のパワーバランス
など、世間によくある不条理な世界を横糸に配し、働く意味や中小企業の誇り
などを縦糸にして、読み応えのある物語が展開する。

ちょっと前に日本が高揚した「はやぶさ」の偉業も記憶に新しい。だから、こ
の小説は、そんな日本の宇宙開発を頭の片隅に置きながら興味深く読める。

登場するおもな人物は、

 佃航平:主人公。宇宙科学開発機構で水素エンジンの開発を担うが、打上げ
     失敗に終わる。事情があって家業の中小企業の社長となる。エンジ
     ン部品を製造する企業だ。しかし、納品先から一方的に取引を打ち
     切りにされたり、競合から特許訴訟をしかけられたりする。
     おまけに、銀行からは、雨降りに傘を取り上げられる仕打ちも・・。

 殿村直弘:佃の会社に銀行から派遣された財務担当。遠慮しつつ、窮地の中
     敢然と佃を支える人になっていく。

 さらに、銀行マン、弁護士、ライバル企業や大手重工など
  
強引な手法で中小企業をねじ伏せてきたナカシマ工業との特許戦争や、大企業
の中でどろどろと渦巻く陰謀に翻弄されたり・・など、先の展開を早く知りた
くなるストーリーは、思わず時間を忘れさせてくれる。

後半は、コア技術の特許だけを頼りに、巨大企業の帝国重工と戦う中小企業の
姿が描かれる。ロケット開発の中心を担う帝国重工は、コア技術のエンジン・
バルブの特許で、あろうことか中小企業の佃製作所に先を越されてしまったの
である。中小企業を見下す帝国重工は、あの手この手で佃製作所に圧力をかけ
てくる。

帝国重工の富岡、佃製作所のメインバンクだった白水銀行の柳井など、悪役陣
の活躍(?)のほか、佃製作所の若手の内部反乱や娘との不調和など、内憂外
患は、佃社長を深い葛藤の闇に放り込んでいく。

そんな中で、佃の仕事にかける情熱や夢、そして、ほんとうに大事なことが、
ぎりぎりのところで救われる展開は爽快だ。

小さな中小企業の技術(エンジンのバルブ)が、宇宙開発の根幹を担うという
ちょっと痛快な物語は、閉塞感漂う日本の中小企業を大いに元気づけてくれる。
同時に、真摯に働く人たちへの一服の清涼剤にもなるのではないだろうか。

実は、池井戸さん、僕の実家の近くの人。で、それがなにか?って言われそう
だけど(笑)いいことがあると、いろいろかこつけて近づきたくなる気持ちが
よくわかる。ともあれ、直木賞受賞は、なんだかうれしい。
ドラマ化も決定(8月21日~)

ドキドキして読めるビジネス小説、夏の夜にぜひ!

おすすめ度は?

   ★★★★★+リフト・オフ!

知りたい?

   ・特許訴訟の舞台裏
   ・銀行マンの矜持
   ・技術者の誇り


■■今日のおまけ:( 違和感という第六感 )

 時々、違和感を覚えることはないだろうか。
 ニュースでも、人が言った言葉でも、あるいは自分の判断でも・・・。
 それってもっともらしいけど、なんか違う・・そんな感覚。

 原発再開のやらせメールも、多くの人がひどい話だ・・・といいつつ、
 一方で、多くのビジネスマンは、なんだか似たようなことは会内で
 ちょくちょくあるな~と感じていた人は多いのではないだろうか。
 ケシカランと声高にいうと、それが自分にも帰ってくるような微妙な感覚。
 
 開店時に行列ができるようにお金でサクラを集めるのも、いわばやらせで
 ある。
 選挙で、○○さんを応援しようと企業などが組織表を動かすのも見方を
 変えれば、やらせの一種。
 株主総会に社員株主がいっぱい参加して、異議な~し!なんて叫ぶのも
 やらせの一種。
 マスコミだってそうだ。報道したい方向性にそったものだけ抽出するのは、
 ある意味で情報の操作である。マスコミ上層部の圧力で、ニュースの伝え方
 が変わる・・・なんていうやらせもきっとあるはず。
 
 こうなると「やらせ」と「まとも」の違いは、対象によるのか、やりかたに
 よるのか、程度によるのか、状況によるのか、タイミングにもよるのか・・。
 結構、微妙な問題に見えてくる。人はどこで、反応の過敏性を切り分けて
 いるのだろうか。

 もし、原発再開問題で、反対派の人が、「みんなで反対メールをいっぱい出
 そう」と運動して、NOの結論がでていたら、私達はどう思ったのか・・・。

 どうやら、やらせの背景にあるパワーバランスが重要そうだ。
 権力と金力のある人が何かを操作した結果、ある結論が導かれるとそれを
 やらせ というってことだね。
 もう少し言うと、ジャッジできる立場の人が、裏で何か操作をしているよう
 な場合を、「やらせ」ということか。

 権力やお金のアンバランスを崩してきたのがインターネット。
 中国も、絶大な権力をもった国家と、インターネットという武器を手にした
 民衆の間で、静かにそのパワーバランスがシフトして、共産党のやらせが
 やりにくくなってきている。

 原発再開メールのニュースを聞いて、いつも感じるこの違和感。ちょっと
 掘り下げて考えてみたいな~。 「これから、やらせの話をしよう」笑

 強要、やらせ、公正    
 <---------------->

 誇大広告 みせかけ広告 公正な広告
 <-------------------------------->

 微妙な問題を、私達は、違和感という素敵なセンスで感知している。

 

Posted by webook at 09:46 | Comments (0) | TrackBack

2011年03月08日

心晴日和 ~ 喜多川泰 + おせっかい道

   コハルビヨリ = 心が晴れる記念日 = 心晴日和

書籍情報

心晴日和
心晴日和
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喜多川 泰
幻冬舎
売り上げランキング: 8387

この本のツボは?

本書は、人生の辛い出来事をどのようにとらえるかで未来が大きく違って行く
ことを体験していくある女性の物語。14歳の美輝と、28歳の美輝の物語が
、オムニバス的に展開される。

 14歳の美輝は、いじめにあっていた。仲間の女子からこそこそと陰口をた
 たかれ、あからさまな嫌がらせも続いていた。美輝は、精神的に追い込まれ
 学校に行こうとすると頭痛やお腹の調子が悪くなってしまう。

 病院で検査をした日、美輝は、屋上で溜息まじりに景色を見ていた。そこに
 現れた治療中の老人が転倒して倒れる。点滴のポールが倒れる音に驚いた美
 輝は、老人にかけよって声をかけた。どうやら大丈夫だったらしい。

 「お前さんのほうが心配じゃな」

 と、美輝の心を見透かしたように老人がいった。老人は井之尾と名乗った。

 不思議な出会いとなった老人と美輝は、やがて心の交流を深めていく。井之
 尾は、どうやら終末介護のような状況でこの病院にいるらしい。

 美輝は、老人からポラロイドカメラで、春を感じされるものを見つけて写真
 をとってくるように頼まれる。美輝はさっそくカメラをもって、華や猫など
 日常のありふれたシーンをたくさん撮って病室に向かった。井之尾は、それ
 をみていたく感激し、同室の老人たちもたいそう喜んでくれた。

 「もう自分の目で見ることを諦めていた春を感じることができたよ。
  本当にありがとう。」

 そんな老人たちの声に、美輝の心は緩んでいく。

 やがて、井之尾と美輝の人生レッスンが始まる。

 ・周りが変わるのを期待するのではなく、自分が変わることによって
  自分の人生は大きくかわるということを知らなければならん。

 ・すべてのことは自分に原因があるということじゃ。

 ・人間関係には、自分を自分らしく保つために必要な大切な経験がしっかり
  組み込まれておる。それは、誰かから認められること、そして、誰かから
  感謝されることじゃ。

 そんなことを気づかせてもらいながら、やがて、冷たい灰色だった学校が少
 しづつ変わっていくのを美輝は感じていた。

28歳の美輝。彼女は、大手建築会社に働いていたが、あるとき出会った材
木店の社長から、働くことの意味、自立することの意味を気づくヒントをも
らうことになる。このストーリーも素敵だ。


人は将来どうなるかわからない未来の空白を二通りのもので埋める。ある人
は「不安」で、ある人は「希望」で。不安で埋める人は「安定」を求めて行
動し、希望で埋める人は「挑戦」しようとする。

行動の結果、どちらも同じ結果に終わる。失敗である。

前者は、それを人のせいにし、後者は、自分の責任ととらえ前に進もうとす
る。(失敗と成功ではなく、果実と種 の考え方だね)

そんなことを、さりげなく気づかせてくれる二つのストーリーは、心に響く
素敵な味わいがある。

本書を読めば、小春日和が心晴日和になるかも。

おすすめ度は?

   ★★★★★+自立

知りたい?

   ・金子材木店って横浜にあるらしい?
   ・日本熊森協会って?
   ・いじめが起きるきっかけは?


■■今日のおまけ:( おせっかい道 )

 茶道、華道、書道、剣道、・・・・と日本人は、さまざまなことを
 道の世界まで昇華してきました。ここにもう一つ楽しい道があります。
 
 おせっかい道。

 まさにこれを究めたような方がいらっしゃいます。仮にMさんとして
 おきましょう。

 Mさんは、書店で知り合いの本をみつけると、そっと目立つように
 棚から引き出しておくのです。1cmくらい。
 これくらいならきっと本屋さんも目くじら立てませんね。

 でも、本を求めてやってきた人には、十分な効果があるかも。
 もし、その本が求める本なら、「あー、僕のためにちょっと飛び出して
 待っててくれたのね」と、妙な感動があるかも。

 「1cmのおせっかい」・・なんだか素敵ですね。
 こんな素敵なおせっかいをする人、他にもいるかなー。


■■虹色の本棚

(高橋さん紹介)「生きているだけでいいんだよ」
   
 今、本のバトンは、爽やかな風にのって、今こんなふうにわたっています。
 しんのすけ→おやじむしさん→高橋ナコさん→勝俣さん→??

 今日は、高橋ナコさんからご紹介いただいた素敵な本です。


----- 本の紹介 -------------------------------------------
 書 名 :「生きているだけでいいんだよ」―臨済録自由訳によるー
 著 者 :町田宗鳳
 出版社 :集英社
 ISBN:9784420310369
 アマゾン:http://amzn.to/ikiteirudakede

 臨済和尚(867年没)という中国、唐の時代の禅僧の言葉を町田宗鳳さんが
 現代語に訳したものです。
 まえがきに、「坊さんらしい殊勝な言葉など彼からまったく期待できません。
 だからこそ彼の言葉はハチャメチャな時代に生きている私たちにとって、大
 いにタメになるのです」 とあります。
 お経のことを「ただのトイレットペーパーだ」などと、教義や経典を有難が
 る姿勢を痛烈に批判するなど、型破りで破天荒なお坊さんだったようです。
 「タダの人が一番」という言葉が繰り返し出てきます。
 「幸せになりたいと思っているなら、とにかくジブンに帰りなさい。立派な
 先生方の口車になんか乗っちゃダメだ。タダの人でいることほど、ありがた
 いことはない。ただただ、フツーでいればいいのだ。
 「どうしてもっとジブンらしく振る舞わないのだ。もともとすべてが備わっ
 ているジブンを信じずに、どうして外に向かって、あれこれ探し回るのか?」

 町田さんの解説も ユニークです。
 『朝が来たら目がさめる。これが霊感です。そして、颯爽と会社に行って、
  バリバリと仕事をする。お腹が空いたら、おいしいものを少しだけ食べて、
  夜が来たら風呂にでも入って、ぐっすりと眠る。
  これが真の超能力です。』

 町田さんは14歳で出家。20年間禅寺で修行を積み、その後アメリカにわたり、
 神学や東洋学を修め、現在は広島大学の教授をなさっています。
 どの言葉も簡潔でユーモアにあふれています。

 「小さな問題にせよ大きな問題にせよ、原因はジブンにしかありません。
 すべてジブンのせいです。世界がまるごとジブンであると人類が気付いたと
 きに、その日から世界平和が始まります」

 タイトルに惹かれて手に取った本ですが、今また読み返してみると、新たな
 発見がたくさんあります。どんな環境に置かれても、感謝して楽しく淡々と
 暮らすことが「タダの人」に一歩近づく道のようです。
 認知症の母の世話でつらいこともありますが、感謝しながら日々を送りたい
 と思います。
---------------------------------------------------------------------

 高橋さん、素敵な紹介、ありがとうございました。
 「普通にやってること。これが真の超能力です」・・なんだか、すごく元気
 をもらえますね。お母様のお世話で日々大変かもしれませんが、感謝の日々
 は、きっと素敵な時間ですね。
 ありがとうございました。(しんのすけ)


Posted by webook at 16:21 | Comments (0) | TrackBack

2010年12月26日

上京物語 ~ 喜多川泰 + 田坂さんからの贈り物

 すべての出来事は、序章に過ぎない。


書籍情報


上京物語 僕の人生を変えた、父の五つの教え
喜多川 泰
ディスカヴァー・トゥエンティワン
売り上げランキング: 2994

この本のツボは?

もしあなたが、大学一年生だったら
もしあなたが、社会人一年生だったら
もしあなたが、新しい道を歩み始めたのなら
もしあなたの子供や知り合いが、上記だったら

ぜひ、この本を読んでほしい。長い人生の節目で、ちょっと遠くを見て
みたい時、素敵なインスピレーションをくれるから。

本書の前半(半分)は、とても長いプロローグになっている。

こんなストーリーで始まる。

一人の青年がいた。成功を夢見て上京した祐介。
いい暮らしがしたい。かっこいい車に乗りたい。自分の家が欲しい。
誰もが思い描く「理想の人生」を追い求めて一生懸命働いた。1年、2
年・・・5年、10年。やがて結婚し、マンションを手にいれ、会社で
もそれなりに働いてきた。しかし、会社の状況は知らない間に徐々に変
ってしまっていた。昇給も思い通りにはいかず、いつまでたっても余裕
は生まれない。一方で、友達は独立起業して成功していたりする。
上京して20年、成功を夢みて上京した自分は、いったい・・・
人生も半部以上過ぎ、そろそろ老後のことを考えなければならない年だ
というのに何一つ手に入れていないじゃないか。人生という貴重な時間
を費やして得たお金をいったい何に使ってきたのだ。一生を費やして、
マンションの一室をやっと手に入れた、それが精一杯の人生だったと
いうのか。佑介は、ベランダでたばこの火を消し、深く嘆息した。

大きな希望に胸を膨らませ、人生のスタートラインに立ったのに、いつ
の間にか他人の常識に流されて生きてきてしまった。そしてかつての夢
も忘れ、「こんなはずじゃなかったのに・・」と後悔する。

いまどき、どこにでもありそうな人生模様。身につまされるようなお話。
実は、この物語は、佑介(祐輔)の父親が作った創作だった。

そして、後半では、多くの人が陥りがちな生き方を打ち破り、自分らし
く生きていくためのヒントが展開される。父から息子へ贈られる渾身の
手紙という形で。

父からの手紙では、破るべき5つの常識について、語られる。

・人は、幸せを他人との比較できめているという常識

・今ある安定が将来まで続くだろうという常識。
 何の根拠もなく、みんながそうだと言っているというだけの理由で。

・ほとんどの人は「成功=お金持ち」という常識の殻の中にいる。
   では、自分の価値観を持つには
   1)時間を投資する。
   2)頭を鍛える。
   3)心を鍛える。

・将来の夢は、お金を稼げることの中から探すものだという常識
   夢は、あるときふっと湧いてくるものじゃない。自分が時間を
   かけて真剣に取り組み、工夫を重ねた経験があることの中から
   しか生まれてこない。

・人生において失敗はしないほうがいいという常識
   普通の人が失敗と呼んでいる出来事こそが、人生の感動や感謝
   新しい出会いといった、幸せな人生に必要なすべてを運んでく
   れるのだ。

我が子に人生のヒントを伝えたい親はいっぱいいる。しかし、なかなか
それは難しい。本書は、そういう思いを物語として、素敵な作品として
伝えてくれるかもしれない。

伝書バトのような作品かも。
父(母)の思い、伝えておくれ、私の代わりに・・・。

深く考えさせられる一冊。

おすすめ度は?

   ★★★★★+我が子へ

知りたい?

   ・子供たちの常識は、ほとんどTVによって醸成される。いいのか?
   ・私たちが生まれながらにもっている貴重な財産。それは「  」
   ・安定とは、何か。


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■■今日のおまけ:( 田坂さんからの贈り物 )

 「風の便り」に乗せて、田坂広志さんから素敵なギフトをいただきました。
 みなさんにもおすそわけします。

 ガイアの思想 のeBook です。PDFでこちらからダウンロードして
 御覧下さい。

 →  http://bit.ly/GiftfromTasaka

 風の便りに寄せられた田坂さんのメッセージもご一緒に・・

 >  ジェームズ・ラブロックの提唱する「ガイア思想」を起点に、
 >   「生命とは何か」
 >   「精神とは何か」
 >   「なぜ、この宇宙は生まれたのか」
 >   「この宇宙は、何をめざしているのか」
 >   「なぜ、世界は、ここにあるのか」
 >   「なぜ、我々は、ここにいるのか」
 >  といった深遠なテーマを縦横に語った 詩的フォトブックです。
 >  新たな年、2011年を迎えるにあたって、
 >  思索の糧として頂ければ、幸いです。

 

Posted by webook at 22:44 | Comments (0) | TrackBack

2010年09月27日

晴天の霹靂 ~ 劇団ひとり + 白玉だんごで哲学

時間の扉をこじ開けた晴天の霹靂・・・

書籍情報

青天の霹靂
青天の霹靂
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劇団ひとり
幻冬舎
売り上げランキング: 323


本のきらめき

きょうは読書の秋にふさわしい一冊をご紹介。

テレビは見るな・・・なんて、時々言ってるのですが、最近、よくドラマを見
たりしている私。(汗)
注目の番組は、「日本人の知らない日本語」と「10年先も君に恋して」。
前者は、先日紹介した同名の本をドラマ化したもの。
そして後者は、きょうの本の著者、劇団ひとりが登場するTVドラマ。「10
年先も君に恋して」は、10年後の未来から舞い戻った夫が、結婚する前の女
性に恋人(自分)と別れるよう説得を試みるというタイムスリップ物語。
そのドラマの中で、劇団ひとりは、小説家として登場する。

さて、今日の本。「晴天の霹靂」も、実はタイムスリップの構図が組み込まれ
ている。

学歴もない、金もない、そして恋人もいない35歳の晴夫。彼は、売れないマ
ジシャンだ。「俺はいったいなんで生きてんだ・・」と17年も場末のマジッ
クバーから抜け出せない自分をはかなむ。生きることに腐りかけていたとき、
あることで昭和48年へとタイムスリップしてしまうのだ。
そこで見聞きするものは、自らの出生に係わる秘密。
懸命に生きる若き日の父親や周りに人々との不思議な交流の中で、生きていく
意味を見つけていく・・・そんな物語。
主人公の晴夫には、著者自身の生い立ちや心境も投影されているらしい。

たくみに張られた伏線がほどけていく過程の面白さと、親子の愛情や生きる
意味を感じさせてくれる“しんみり感”が素晴らしい。

じんわり心にしみる物語。親子で読んでみてはいかが?
(ちなみに、この本、娘に勧められてよんだもの。図らずも、そこに生まれた
共感という空気を、父親としては密に大事にしていたり・・・笑)


僕のつぶやき

ドラマや物語を盛り上げるのに必要な要素は3つ。
ちょっと頼りなさげな主人公。そして彼(彼女)が陥るピンチ。さらに、そこ
に発生する必然的偶然。

またまたTV番組で恐縮だけど、夏休みにハマったのが「パパとムスメの7日
間」(TBS系、再放送) http://www.tbs.co.jp/papa-musume7/
舘ひろしと新垣結衣の共演で、パパと娘が突然入れ替わるという想定の中に、
父親や娘の心の機微が現れていてとてもよかった。このドラマにもまさに3つ
の要素が組み込まれていた。

タイムスリップや入れ替わりなど、奇想天外な構図は、3つめの必然的偶然。
読者や視聴者がちょっと予想もつかない展開ができるから楽しい。

それから、ピンチや苦境は、ドラマの必需品・・、もし、今がやばい時なら、
それはネタにできる大チャンス・・・。
(と思いこで)がんばってまいろうぞ。



オススメ度

★★★★★+青い靴下

読んで欲しい方

・家族の愛を思い出したい方
・自分を取り戻したい方
・秋に読む本を探してる方

Posted by webook at 21:35 | Comments (0) | TrackBack

2009年01月26日

HOPE!おばちゃんとぼく ~ 阪本啓一 + オバマ大統領に会う


受け入れてみる・・・

書籍情報

HOPE!おばちゃんとぼく
HOPE!おばちゃんとぼく
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阪本啓一
メディアファクトリー
売り上げランキング: 83542

本のひらめき

本書は、阪本さんのはじめての小説。とても面白く、さくっと読めて、なおか
つ、生き方、働き方などを感じさせてくれる素敵な物語である。

新幹線を乗り継ぎながら、恋愛のこと、仕事のこと、家族のこと、いろんな糸
が織りこまれている。

主人公のぼくは、トイ・ファクトリーというおもちゃ業界の会社に勤める27
歳の独身サラリーマン。ハロちゃん人形の売り出しのとき、上司の品川部長の
ミスである事件がおきる。
こともあろうに、ぼくはその濡れ衣を着せられるハメに・・・。

会社での理不尽に嫌気がさして、かってに会社を休み、旅にでたぼく。

新幹線の旅で出あうコテコテの大阪弁をしゃべる不思議なおばちゃんとのかけ
あいが面白い。

途中で出会うカリスマ添乗員の平田さんは実在の人(日本旅行の平田信也さん)
だ。そのエピソードも楽しい。

ビジネス、マーケティングなどのエッセンスや、人生の機微など、さまざまな
ものが織りなされている。

阪本さん自身や、お母さんの生き方が投影されている自伝的な小説。とっても
おすすめ!


僕の思いつき

阪本さんのお母さんをモデルにしたこの小説。楽しく読めて、そしてどこかほ
ろりとし、また勉強にもなる。

我が家の子供たちも、こっそりよんで気に入ったらしい。どこが気に入ったか
微妙なところだが、「大阪弁は可笑しい」というのが彼らの気に入り方だった。
まー、それはそれでよいことに・・・。

自分の人生だけだと、なかなか小説のようには面白くならないけれど、そこに
これまで見聞きしたり、本で読んだりした人物を登場させてみると、けっこう
面白い小説が書けるかもしれない・・・。

いつか、小説を書こう(ね)


オススメ度

★★★★★+おばちゃん

読んで欲しい方

・仕事についてちょっと考えたい方
・人生の機微を感じたい方
・お世話になってる方を思いたい方

Posted by webook at 15:25 | Comments (0) | TrackBack

2008年11月03日

エブリリトルシング2.0 ~ 大村あつし + サマータイム終わり

人生、無駄なことはひとつもない・・・

書籍情報

エブリ リトル シング2.0
大村 あつし
ゴマブックス
売り上げランキング: 41661


本のひらめき

心にしみる物語。本書はオムニバスのように6つの物語が展開されている。一
見、関係ないような6つのストーリーは、彩を織るようにたくみに展開されて
いく。全体にに流れるのは、物事のとらえ方次第で人生は変わるという、生き
る意味や働く価値などを感じさせる素敵なテーマだ。

清明という主人公のまわりに配された人たちが繰り広げる人間模様は、どこに
でもありそうなお話だが、たくみに張られた伏線が現れる時、静かな感動と爽
やかな気持ちに包まれる。

第一話は、銀行から中卒の母親を役員から除外しないと融資ができないと言わ
れ、学歴や資格で母親を侮辱するような融資は受けない!と断る社長(清明)
のお話「おふくろの履歴書」。母親のまさみが、清明に伝えた大切なこと・・
それは「理不尽に耐える忍耐力」。祖父の葬儀で聞いた想絶な親子愛が涙を誘
う。(昨年他界した自分の親もきっとそうだったんだろうなと、涙がにじんだ)

子育てをしながらキャリアウーマンを続ける女性の話も、あなたの大切なもの
はなんですか?という深い問いを投げかける。
女でも出世したい!!でも育児はどうする?
そんな彼女を悩みから救ったのは、四歳の娘が差し出した画用紙だった。
第3話、「ホワイト・リビングルーム」もじんとくる。

名前ではなく「簿記二級」とさげすみの呼称で呼ばれていた女性が、仕事とは
何か、資格とはどんな意味があるのか・・・その深いところに気づく物語(第
4話)「一つのメメント」も素敵である。

このほか合わせて6つの物語は、大学時代の5人の仲間が微妙に織り込まれ、
実に見事な構図になっている。それを老いた母親が遠くから見ている最後の話
もすばらしい。

いくつかの素敵なフレーズが心に残る。

 理不尽に耐える忍耐力。

 課長などという嫉妬や羨望の産物よりも、はるかに尊いその笑顔。

 この世に雑用なんてない。雑にやるから雑用になるんだ。

 私の価値が決まるのは、私ではなく、清明(息子)の棺桶に釘が打たれる時。

この本、時を置いて、二度読み、そして二度泣けた。


僕の思いつき

いつか僕も、心にしみる素敵な物語を書き遺したいと思う。小説として賞をと
るとか、とらないとかではなく、この星に生まれ、たくさんの出会いや、様々
な経験をし、気づき、感動、落胆、悩み・・・さまざまなな出来事の中で、ひ
ろったエピソードを物語にしたら、きっと楽しいだろうなと。

本書の中に登場する様々な人たちやシーンも、きっと大村さんの原体験のいく
つかがベースになっているのだろうなぁ。

人生無駄なことは一つもない。

そんなメッセージも受け取ったような気がする。
第一弾のエブリリトルシングも読みたくなった。



オススメ度

★★★★★+生きてる証

読んで欲しい方

・自分の人生について考えたい方
・心を少し解き放ちたい方
・仕事の意味を感じたい方

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2008年02月11日

のはなし ~ 伊集院光 + クジラを見たよ!

マイナスイオンを浴びてみよう!

書籍情報

のはなし
のはなし
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伊集院 光
宝島社 (2007/09/28)
売り上げランキング: 1386


本のひらめき

本書は、かつて著者が携帯電話のTUKAのメルマガに寄せたエッセイ750通(5年間)程の中から80篇を厳選して集めた脱力系「のはなし」である。

著者の日常の中から、失敗談とか恥ずかしい話が披露されている。元落語家らしく、ちょっとした落ちがあるのが楽しい。タイトルの「のはなし」というのは、読者から寄せられた7文字以内のお題につけた下の句、xx「のはなし」というところからきている。

母親についた小さなウソがとんでもないことになって「万引き」の誤解を生んだ話とか、タクシーの運転手さんと盛り上がり、最後にサインをねだられたんだけど、どうやら石塚くんと勘違いだったとわかり、気まずい雰囲気が流れた話題とか・・・「あ」行から「ん」まで楽しい話題がいっぱい。くくくと笑えて脱力できる。(∴ 電車の中で読むのはオススメできない)

か行の話に「結婚式の話」がある。これは落語家の副業の話題なんだけれど、とっても楽しい。落語家にとって結婚式の司会というのは、美味しいバイトのようだ。中でもなぞ賭けが披露宴の定番としてウケルらしい。なぞ賭けというのはxxと掛けて○○と解く、その心は△△、っていうもの。例えば

 「お弔い」と掛けて、「うぐいす」と解く。その心は・・
 「泣く泣く埋めにいく」(鳴く鳴く梅にいく)

結婚式用の定番は

 「夫婦喧嘩」と掛けて、「おっぱい」と解く。その心は
 「すったもんだで大きくなる。」(吸った揉んだで大きくなる)

 「○○家xx家、ご両家」と掛けて、
 「松井の二打席連続満塁ホームラン」と解く。その心は、
 「8点マチガイナシ。」(発展マチガイナシ)

など。

どの話も、クスリと笑えて、元気になれる。

さて著者の伊集院光さん、どんな人だっけこの人?とグーグルで調べてみた。あー、あの人かーと思い出した。笑 こんな方「のはなし」であーる。
  http://www.horipro.co.jp/talent/PM011/

僕の思いつき

この本を読んでてふと思い出したのは、藤原和博さんがいっていた「マイナスイオンの法則」。何かっていうと・・・

 「自分のプラス面や自慢話を機関銃のようにしゃべるより、過去の失敗や
  挫折経験を披露したほうが、聞く人は一生懸命きいてくれるし、逆に
  プラスエネルギーを注いでくれる。」

っていうもの。確かに、自慢話をする人より、失敗談を面白ろおかしく語る人のほうが親近感をもったりするよね。

この本もまさにマイナスイオンのいっぱいある本だ。

ってことは、マイナスイオンを出しそうな話は、いいネタってこと。
つまり、失敗したり、怒られたり、ミスったり・・・そんなときは、そっと喜んでみたらいいね。(上司、先輩には悟られないように・・・笑)
マイナスイオンを放つ素晴らしい宝物がたまっていく。

だから人生は楽しい。



オススメ度

★★★★★+マイナスイオン「のはなし」

読んで欲しい方

・ちょっと脱力してみたい方
・なんだかピンチの方
・肩の力を抜きたい方

Posted by webook at 15:24 | Comments (0) | TrackBack

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