2022年12月30日

三流シェフ〜三國清三著

★【Webook 2022.12.29】三流シェフ(三國清三) + うそつきは平和の始まり

---[年末です]-----------------------

 お久しぶりです。
 2022年もあとわずか。皆様はどんな
 一年だったでしょうか。
 今年3月、私は熊本から千葉へ引越。
 仕事も変わり、今までとは異なる
 日常になりました。
 今年は新たなチャレンジもあり
 ワクワクする一年でした。
 来年は、もっと楽しく面白く。w
 皆様、健やかに
 よいお年をお迎えください。

   まつやま・しんのすけ(@千葉)
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■   Shinnosuke Matsuyama

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   セ・パ・ラフィネ(*)

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■【今日の一冊】~ 三流シェフ

 雑用こそ人生の突破口!

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|三國清三/著
|幻冬舎|2022年12月
|ISBN:4344040643|1650円|264P
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__《 この本のツボは? 》_________

 2022年、今年最後に紹介する本は、オテル・ドゥ・ミクニのオーナーシェフ三國さんの波乱万丈なライフストーリーです。   
三國清三(みくに・きよみ)さん、1954年生まれの67歳。僕ど同年代です。北海道の貧しい漁師の家生まれで、小学生の頃から漁に出ていたという。そんな少年がふとしたはずみでレストランの厨房に紛れ込む。それが人生の転機に。この本は、今や世界のMIKUNIとなった三国さんの半生記です。

 中学卒業後、札幌グランドホテル、帝国ホテルで修行し、駐スイス日本大使館ジュネーブ軍縮会議日本政府代表部料理長に就任。その後いくつかの三つ星レストランで修行を重ね帰国。今から37年前、1985年に東京・四谷に「オテル・ドゥ・ミクニ」を開店。
著者の経歴を並べるとこんな感じですが、全ての経歴には波乱万丈なドラマが潜んでいます。世界のMIKUNIとしての超有名な存在となっている三國さんも、若い頃は苦労や挫折の連続。しかもそれは、常人にとってはとても受容できそうなもないものでした。
 
 レストランの厨房で何年も皿や鍋を洗い続けてきた三國さん。「雑用こそ人生の突破口だ」と、人が嫌がる仕事を自らかって出る。しかも、とんでもない量をこなす。すると、仲間からは感謝され、徐々に話もできるようになる。やがて、トップのシェフの目にも止まり、幸運の女神が微笑む。そんなことが、三国さんの人生のいろいろな場面で登場します。
世の中の不条理やどうしようもない苦境に遭遇したとき、どうするか。あきらめずに目の前のできることに集中する、何かできることはないか目を皿のようにして見つめ、考え、行動する。この本を読むと、訳もわからず勇気がもらえる気がします。

 三国さんは幼いころから父親と一緒に漁に出ていました。その時に、親から教わった大切な言葉は「大波が来たら逃げるな。船の真正面からぶつかっていけ。逃げようとして波を横腹に受けると船は沈むぞ。」でした。その言葉通り、様々な苦境に際し、三国さんは常に正面突破を試みる。

 最初に狙いを定めたのは札幌グランドホテル。天皇陛下も止まる皇室御用達。そこのレストランのコックになろうというのが三国少年の夢。しかし、中卒の三国さんには、就職する資格さえなかった。中卒では応募すらできない。しかし、なんとしてもグランドホテルのコックになると決めた三國少年は、わずかな機会を逃さず大胆な行動に出る。当時の西洋料理課長代理の青木さんに直談判。よほど真剣な目をしていたのでしょう。後年、その青木さんは「あんな目をした人間は見たことがなかった」と述懐する。
 その後、東京の帝国ホテルの総料理長、村上さんにも認められるほどになるが、正社員になる夢は、直前で断たれる。悲嘆に暮れながらも帝国ホテルに自分の爪痕を残そうと、全ての厨房(当時ホテルには18のレストランがあった)の鍋をピカピカにして去ろうとする三國青年。そこに声をかけてくれたのが、総料理長の村上さん。なんとオーストリア大使館付きの料理長に推薦してくれたのです。出国する三國さんに総料理長の村上さんは、「10年は帰ってくるな、稼いだ金は自己投資しなさい」と声をかけます。

 その言葉通り、三国さんは大使館付きのシェフを皮切りに、多くの三つ星レストランの門をたたき(←まさに、門をたたき、追い出され、諦めずなんとしても潜り込み・・・というのが三國スタイル)修行を重ねます。
フレンチの最高峰といわれたフレディ・ジラルド(即興の天才)やアラン・シャペル(料理の哲学者)にも薫陶を受けて帰国。
 帰国後は、ジャポネーゼという独自のフレンチを開拓し、「オテル・ドゥ・ミクニ」を開業。この時も数奇な出会いと強運、そして行動力がありました。

 さて、37年続けてきた「オテル・ドゥ・ミクニ」を三国さんは2022年12月に閉じる。これまでにもてなしたお客さまの総数は30万人を超えるという。歌手、芸術家、各国元首、大使、ハリウッドスターなど著名人だけでもすごい数に上る。そして、3年後、三国さんが70歳のときには、新たに小さなレストランが生まれることになる。これは楽しみです!

 本書は、ビジネス書というより哲学書というほうが似合うでしょう。料理という世界を通じて、どう生きるか、己は何者か、・・・日々の真剣勝負の中で、呻吟しながら突き進んできた三國さんの半生記は、ドキドキの連続でもあり、人の縁と時の運を呼び込む三國ストーリーに、なぜか元気がもらえます。
 三国さんの生き様を感じる時、それぞれの年代に応じた何かを感じ取ることができるでしょう。実は、私は三国さんと同年代。さて私は何を感じ取ったのでしょうか。(それは内緒です。w)

 年末年始の間に読むと、新しい年への勇気がきっと湧いてきますよ。ぜひ!


(*: ムッシュ・シャペルが三國さんに行った言葉:洗練されていない)


__《 お薦め度? 》_______


   ★★★★★ + コム・テュ・ヴ(**)

   (**:ムッシュ・ジラルデが三國さんに言った言葉:お前の好きにしろ)


__《 知りたい? 》_______

   ・もうダメだと思っても、やれることは、ある!を感じたい方
   ・正面から立ち向かえ!を感じたい方
   ・全ては意味があるということを感じたい方

__《 買いたい? 》_______

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■■ 臨機応援!(うそつきは平和の始まり )

子供のころ、ウソをつくと、閻魔様に舌を抜かれるぞと脅かされました。たしかに、ウソはいけないことです。政治の世界ではウソがはびこって、もはや、あいた口が塞がらない状態ですね。
さて、ウソは、ほんとにいけないことでしょうか。おそらく、世の中に嘘をついたことがない人は一人もいませんね(当然、私も)。状況によっては、自分以外の誰かを守るためにつくウソもあることでしょう。

今年、上演した「うそつき男のはなし」は、そんな状況が描かれています。うそつき男のウソで、戦争を続けてきた二つの国が平和になるというものです。羽田空港でフラッシュモブを一緒にプロデュースしたジョルジュ王野さんの脚本でした。(詳しい説明は、こちらに →  https://bit.ly/USOotoko )言ってみれば、うそつきは平和の始まり、というストーリー。

小さなウソがとんでもないことになることもあるし、とほうもなく幸せなことになることもある。
かわいいウソが世の中を平和に、まーるく、楽しくしたら、いいですね。

似合っていない髪型や洋服をみて「なに!それ、変だよ!」と正直にいうより、「へ〜、あたらしいチャレンジだね」と言葉を変えるのは、本心をちょっとシフトさせた優しいウソとも言えます。人を傷つける正直より、人を励ます優しいウソのほうが、人間関係をよくすることもありますね。

ウソもホントも、その言葉の背後に、思いやる優しさがあるかないか・・・それが大事なのでしょう。

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■■ 2022年の振り返り

今年もあっという間に過ぎ去った感じ。いろんなことがありましたね、私も大きな転機がありました。

3月に第二のふるさと人吉を離れ、千葉に戻ってきました。その後も人吉とのご縁は続き、相変わらず2ヶ月に一度くらいのペースで訪問し、ご縁のある方を応援しています。いつでも歓迎してくださる皆さんには、ほんとにありがたく嬉しく・・。

2月、7月、10月と大学の講義。5月には三重県でもお声がけをいただきました。
10月は、ソフィアバンクとNPO(秋山さん)共催のMED2022に参加しました。シニアビジネスの第一人者村田さんや、岡田さん(サッカー元日本代表監督)ともお会いできました。
11月は、「うそつき男のおはなし」という朗読劇にチャレンジ。クラウドファンディングや演者として、愉快な仲間と面白いことに挑戦させていただきました。
12月は、田坂広志さんに同行して、富士五湖自然首都圏フォーラムの記者発表に参加しました。山梨県知事、隈研吾さん、山東昭子さんなどのメッセージと田坂さんの構想プレゼンは、圧巻でした。
そしてそして、11月は、なんとコロナに罹患。幸い後遺症もなく回復しましたが、高熱はもう十分です。w

来年は、健やかに楽しく面白く、ワクワクして過ごしたいですね。
皆様もどうぞお元気で、良い年をお迎えください。  松山 拝


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Posted by webook at 08:43 | TrackBack

2009年02月02日

アホは神の望み ~ 村上和雄 + どんな心境で選択するか

素直で正直、器が大きなアホであれ!

書籍情報

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録
石川 拓治 NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」制作班
幻冬舎
売り上げランキング: 31

本のひらめき

村上さんの本は、どことなく素敵な香りがある。生きること、この世に存在す
ることの意味や価値を感じながら、愚直に前に進む勇気がもらえる。

 ウサギがカメを追い抜くように、バカは利口を超えるところがあります。
 利口とは、ある範囲において限界まで届く知性のことですが、
 バカやアホというのは、その限界をあっさり超えてしまうことが
 しばしばあるからです。

木村さんは、小利口に浅く生きるより、大きな愚かさをもつ深い生き方を勧め
ている。

エジソンもアインシュタインも、小利口に生きるのではなく、器の大きなバカ
を生きた人らしい。最近ではスティーブ・ジョブスもその一人だ。
日本でもノーベル賞の湯川博士も、自分の凡才ぶりに悩んでいたとか。島津製
作所の田中耕一さんも、目立たない地味な存在だった。
どうやら神様は、器の大きなアホに微笑んでくれるらしい。先日の「奇跡のリ
ンゴ」の木村秋則さんもそんなアホの一人に違いない。

スティーブジョブス(Apple)のスタンフォードでの卒業祝賀スピーチは、感動
的な内容としてネットで広がった。その中にも

  Stay hungry, stay foolish. (ハングリーであれ、愚かであれ)

という言葉がある。常識なんかはみ出してしまう器の大きなバカになれという
メッセージだ。

バカは、常識にこだわらない。ときに人からMosoもいいかげんにしろとバ
カにされる。しかし、そこに一途な思いや深い思想があれば、神は微笑んでく
れるらしい。

アホに必要な要素、それは熱意、楽観、軽さ、覚悟、それに息抜きだという。

遺伝子工学の世界的権威が語る、自然と生命の法則。そこに登場する重要なキ
ーワードが、「バカ」というところが、また面白く不思議なところでもある。

深い洞察に、心が震える本である。


僕の思いつき

生命がもっている「生きすぎない」という節度の話は、ちょっと衝撃的だった。
だいぶ昔、つくば万博があり、そこで巨大トマト(一本の木から1万個も実を
つけたトマト)が紹介されていた。単にトマトがたくさんなってすごいという
だけではなく、生命の力は、阻害要因を取り除いてやれば無限の力を発揮でき
るんだ・・・というメッセージを多くの人が受け取った。

木村さんは、さらにそのあと、深い問いを続ける。

 では、なぜ自然界には、そういうトマトがないのか?と

それは、生きすぎないという「つつしみ」の意志のようなものが自然界にはあ
り、自然と生命のすごさもそこにあるのではないかと・・・。

なるほど。

ドーキンスが言った利己的遺伝子のことを知ったとき、とても新鮮に思った。
そして、木村さんの本で、利他的遺伝子という言葉で、さらにその先の深みを
知ることができた。

モアモア病やジブンガ菌に犯されてきた20世紀の発展は、ここにきて地球か
らのメッセージを受け取る新たなパラダイムシフトの世紀に入った。臨機応援
、利他的・・・これらの言葉に、パラダイムシフトのヒントがあるのではない
だろうか。

「無限の可能性」と、「生きすぎないというつつしみ」

自然のもつ不思議な矛盾、深い理(ことわり)に、資本主義社会が追い求めて
きた傲慢さを反省するときかも・・・と思った。



オススメ度

★★★★★+Stay Honest, Stay Stupid

読んで欲しい方

・科学と宗教の交差点に立ってみたい方
・生きる意味を考えたい方
・宇宙の理(ことわり)を感じたい方

Posted by webook at 15:23 | Comments (0) | TrackBack

2009年01月19日

奇跡のリンゴ ~ 石川拓治 + 招き猫

命。それは奇跡の営み・・・

書籍情報

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録
石川 拓治 NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」制作班
幻冬舎
売り上げランキング: 31


本のひらめき

前々から読みたかった本がやってきた。表紙で笑っている木村秋則さんは、ほ
とんど歯がばい。リンゴの葉っぱと取り換えちゃったとおどけて言う木村さん
だが、さまざまな困難と苦労の跡でもある。

誰もが不可能といった、無農薬のリンゴ栽培という無謀なチャレンジを9年も
の長い間続け、ついにそれを実現してしまった不屈の人の物語である。

この本を読むにあたって、ひとつ知っておくとよいことがある。お店で買うリ
ンゴがどのようにできてきたのか・・・というリンゴの歴史。お米や牛肉など
ほとんどの食材が工業化されてきた歴史でもある。

キーワードは、「品種改良」と「農薬」である。人間の都合(生産効率、ビジ
ネス)のためだけを考えて、リンゴは、19世紀盛んに品種改良が加えられた。
アメリカが特に盛んであったらしい。その後、「農薬」が発明され、さらにリ
ンゴは人の手が加えられていく。

人に都合のいい品種改良と、これまた人(ビジネス)に都合のいい農薬が発明
され、自然の中の営みとしてのリンゴは、どんどん進化(たぶん、この言葉は
不適切であろう)してきた。こうして、リンゴの木そのものが体質的に変わっ
てしまった今、農薬なしの生産はあり得ない状況なのだ。なぜなら、今の品種
は、農薬を前提に品種改良されたリンゴだからだ。

 リンゴという果物は、農薬に深く依存した、現代農業の象徴的存在なのだ。

そんな中で、木村さんを「誰もが不可能といったリンゴの無農薬栽培」という
Mosoに向かわせたのは、福岡正信の書いた一冊の本だった。
「何もやらない、農薬も肥料もなにも使わない農業」という題名。

木村さんの9年の努力は、貧困、誹謗中傷、家族への心配、自分の中の苦悩、
などさまざまな困難の道程だった。最後は、岩木山で首をつって死のうと思
うまでに至る。しかし、そこで見たものは、山に生えていたリンゴの木。(
実はそれはドングリの木だったのだが、それは問題ではなかった)

稲妻のように木村さんの脳裏を走ったのは

 自然の植物が、農薬の助けなどかりずに育つことを
 なぜ不思議に思わなかったのだろう。

ということだった。

本書は、9年という歳月をかけ苦労の末に奇跡を起こした物語というだけでは
ない。私たちがこの地球上で生きている本当の意味や、毎日食べている食べ物
を工業製品にしてしまったことの功罪、自然と人間のかかわりなど、とても深
い問いを私たちに投げかけている。

その問いとは、人間と自然との折り合いの付け方である。自然を征服するので
はない。人間も自然の生み出した一つの生き物である以上、自然との調和が必
要なのだ。

木村さんは、リンゴと向き合った壮絶な過程の中で、自分の仕事の意味を悟る。

 自然が織りなす生態系という織物と、リンゴの木の命を調和させることが
 自分の仕事なのだ、と。

涙なしには読めない本書から、いくつかの啓示を受けたように思う。


僕の思いつき

木村さんのやったことは、ただ無農薬のリンゴを作ったということだけではな
い。自然と人間、その歴史の中で、忘れ去られようとしていた大切なことを人
々に教えてくれたことではないだろうか。

木村さんの言葉が、深い。

 人間にできることなんて、そんなたいしたことじゃないんだよ。みんなは
 木村はよく頑張ったって言うけどさ、私じゃない。リンゴの木が頑張ったん
 だよ。私にできることは、リンゴの木の手伝いでしかないんだよ。

 自然の手伝いをして、その恵みを分けてもらう。それが農業の本当の姿
 なんだよ。

そして、木村さんのインタビューから深い洞察を引き出した著者、石川さんも
すごい。石川さんが、はじめてこの奇跡のリンゴを口にしたとき、不覚にも涙
を流しそうになったという。すごく美味しかったのだけれど、それ以上の何か
がリンゴに満ち満ちていたらしい。石川さんの次の言葉が印象的だ。

 その何かを言葉で説明するのは難しい。
 無理やり言葉にするのなら、生命とでも表現するしかないもの。

命。リンゴにも、バッタにも、細菌にも・・・私たちにも宿っている「命」。
木村さんが向き合ったのは、命という宇宙の摂理だったのかもしれない。
 
よし、木村さんに会いに行こう。本書を読んでの最初の思いはこれだった。
帰国するときは、ちょっと弘前市により道をたくらんでみよう。一緒に行きた
い人がいたらご連絡を!


オススメ度

★★★★★+内なる生命力

読んで欲しい方

・おいしいリンゴが好きな方
・命の不思議を感じたい方
・奇跡は起こると思う方

Posted by webook at 15:28 | Comments (0) | TrackBack

2008年02月19日

ホームレス中学生 ~ 田村裕 + 初めての・・・

 何気ない日常、それは、かけがえのない日常

書籍情報

ホームレス中学生
ホームレス中学生
posted with amazlet on 08.02.19
麒麟・田村裕
ワニブックス (2007/08/31)
売り上げランキング: 264


本のひらめき

社員の一人が、デスクの上に一冊の本を置いていた。それが出逢いだった。
「この本どうだった?」(僕)
「泣けました・・・」(Kさん)
さっそく、借りて読むことになった。今日はその本をご紹介。

漫才コンビ麒麟の田村さんが中学生のころ経験した極貧のエピソードを綴った人間味溢れる素敵な物語。

中学の夏休み前、突然の「差し押さえ」騒ぎから、生活は一転。兄、姉、著者の3人の子どもは極貧生活へ陥る。何しろ公園のすべり台の中で寝泊りし、自販機のコインをあさり、はては草やダンボールまで食べてみる・・・。

そんな中、万引きの誘惑を亡くなっていた母の面影が踏みとどまらせたり、兄弟が助け合ったり・・、ごくありふれた日常に幸せを見つけていく兄姉弟の姿がとても感動的に語られている。芸人らしく面白ろおかしく、そしてせつなく。心に響くストーリーが展開されている。

浮浪者生活から救ってくれた友達の家族、暖かい思いを寄せてくれた工藤夏美先生との出逢い・・・いくつかのエピソードは、私たちの心の奥深いところに眠っている何かを呼び覚ましてくれる。

ホームレスという著者の特異な体験と感情を通しながら、いつのまにか、私たちは自分の心と対話していることに気がつく。なつかしい思い出や親の温もり、兄弟の愛、恩師の言葉が思いおこされ、束の間、心の洗濯ができる。

島田洋七の「佐賀のがばいばあちゃん」のノリで、心を豊にしてくれる一冊だ。


僕の思いつき

本書の舞台になった大阪千里の山田西第二公園は観光名所になっているという。
行ってみるのも楽しいかな・・・

この本の終わりは、

「いつか、僕を見て周りの人が、僕ではなく、お母さんのことを褒めてくれる
 ようなりっぱん人間を目指して。」

で結ばれている。お母さんからうけた無類の愛情を受けられたのだろう。

命を授けられ、育まれ、やがて自らの命を次代に残すことになる私たち。日々なにげなく流れていく時間も、ふと考えると、それはかけがえのない時であったりする。

お茶漬けをかけ込むこの一瞬が
子どもと手をつなぐこの感触が
いってきまーすというその声が

仮にこれで最後かと思いを泳がすとき、何気ないしぐさは、とても尊いものに見えたりする。

すべてのことに、すべての人に・・・・感謝を・・。



オススメ度

★★★★★+カッパ巻き

読んで欲しい方

・生きることの意味を見つめたい方
・麒麟ファンの方
・母の存在を感じたい方

Posted by webook at 09:28 | Comments (0) | TrackBack

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