いい話の裏には深い商いの心がある。
本書は、著者が連載している「招客招福の法則」という日経MJの人気コラムを書籍化したもの。その第二弾である。
商売の楽しい「発想」とユニークな「視点」が毎回展開されて実に面白い。
それが、地方のクリーニング店だったり、電気屋さんだったり、ブティックだったりする。その物語の清々しさは、商売のヒントだけでなく、私たちが何をみつめながら仕事をするのか、商売をするのか・・・といった哲学的思索の入り口を示してくれるのがいい。
第二弾にもちょっと登場するが、第一弾にある最も印象深いエピソードは、耳の欠けた猫の貯金箱の話。聞き覚えのある方もいるかもしれないが、ちょっと再掲しておこう。あんまり素敵な話だから・・・(前巻、法則69に登場する)
店長がうっかり落として耳が掛けてしまった猫の貯金箱。普通ならキズもの
として処分する。しかし、店長は「耳が欠けているからこそほしいと思わせ
よう」と考え、心のなごむPOPを考えた。
「私は耳をケガした猫です。おかげ様で元気になりました。
誰かかわいがって下さる方を探しています」
というPOPを書いたのだ。
すると、それは、実際にすぐ売れた・・・・。
というお話。売った人と買った人の間に流れたものは、してやったり・・といった勝ち負けのビジネススタイルではなく、なにか暖かいものだったに違いな
い。
こうした売り手と顧客の関係がともて心温まるデピソードがいっぱいある。
本書で印象深かったのは、とれたボタンを見つけようと奮闘したクリーニング店主の話。お客様と店主、そしてメーカーをも巻き込んだとても素敵な心の交流が紹介されている。清々しい気持ちになれる。
商売は、ものやサービスとお金の交換・・・という定義では語りきれない。そこにはもっと素敵なものが交わされているはずだから。
どんなビジネスシーンでも、どんな業務においても、それができる・・・と思う人こそ、ほんとうに仕事を楽しむ心のある人かもしれない。
商売に限らず様々な仕事をしている人に読んでほしい一冊。
最後には招客招福の特製シールもあって、また楽しからずや!である。
あなたの仕事デスクに一冊おいておくべき本、ですね。
もうひとついいお話をつけておこう。
映画のDVDを売るクリーニング店のお話。しかも正価。さらに驚くのはなんと映画の題名を教えない・・・(笑)
その商品は中身が見えないように包装され、お店に並んでいる。POPがとてもしゃれている。
「あなたのためにとっておきの映画をご用意いたしました。
ご夫婦で見れば、長いこと二人で歩んできたなーと、お互いを思いやる
心がよみがえります。。。」
と続くが題名がない。
「タイトルは秘密」なのだそうだ。
それでも、正価でしっかり売れているという。
この背景には、店主とお客さんの間の日頃の関係性がある。信頼があるからこそできる話。お客さんは、すでに(この店主の勧めるものなら間違いない)というレベルになっており、万が一外した場合でも、なんとかリカバーできる工夫と余地があるのだろう。
商売をするなら、こうした楽しいことをやりたいものだ。
この関係性をつくるには・・・情報発信というコントリビューション(貢献)を地道にやっていくのが何よりだね。
★★★★★+あきないは楽し!
・お店を楽しい場所にしたい方
・お客さんともっとつながりたい方
・商売の醍醐味を感じたい方