「さざ波」から「うねり」へ
本書は、チェンジメーカーの第二弾。
ちなみに第一弾は、こちらに:
http://www.webook.tv/bn/2006/08/post_1170.html
チェンジメーカーとは、世の中を変える仕事をライフワークにしている人たち
のことだ。
社会企業家、ソーシャルアントレプレナーといった表現が、今では耳に馴染ん
できた。本書は、世の中の見過ごせない矛盾や問題を解決しようと、一隅を照
らす事業を続けている、そんな人たちのドキュメンタリーである。
本書には、17人のチェンジメーカーが登場する。彼らは渡邉さんが、情熱と
志でご縁の糸を手繰り寄せた素敵な社会起業家たちである。アメリカ人、フラ
ンス人、日本人など様々な人が登場する。
例えば、
* 泥水でも飲める「ライフストロー」を開発しアフリカの人たちの役に立つ
製品を作り続けているVF社のミケル・フランドセン。
http://www.vestergaard-frandsen.com/lifestraw.htm
彼は、「施しではなく、ビジネスが世界の貧困を変えていく」という。
* フローレンス代表の駒崎弘樹さんは、日本の子育てシーンに「病児保育」
という新しいサービスを導入している人だ。人情あふれるコミュニティの力
がなくなり、それに代わる新しいシステムを構築しようと、このサービスは
生まれた。「こともレスキュー隊員」となづけた保育スタッフの女性を組織
し働く女性の支援をするサービスである。
http://www.florence.or.jp/
社会が螺旋階段を登るように進化するプロセスそのものではないだろうか。
* アメリカの貧困地区の公立校で教育を改善し子供たちの学力をのばそうと
しているのは、キム・スミスさん。ニュースクール・ベンチャーファンドの
共同創設者である。 http://www.newschools.org/
http://ecorner.stanford.edu/authorMaterialInfo.html?author=54
その発想がとてもユニーク!
「誰もが一生に2年間、先生になるという新しい選択肢」の提案である。
TFA(Teacher for america) と名付けられたプログラムは、地域の教育
も学生の意識も、そして企業の目線までも変えつつあるようだ。
http://www.teachforamerica.org/
17の事例のほか、たくさんのチェンジメーカー情報も紹介されている。
よりよい世界を実現する活動への寄付サイト「グローバル・ギビング・ファン
デーション」 http://www.teachforamerica.org/ や、ホームレスのための給食
サービス、DCセントラルキッチン( http://www.dccentralkitchen.org/ )
など、へぇーと感心するものがたくさん・・。
最後に、田坂広志さんの解説を読むと、渡邉さんが取材されこの本を書かれた
深い意味と意義が、静かに心に伝わってくる。
正直に告白すれば、僕は、今だこの年になっても、この星にやってきた自分の
使命を定義できず、ふらふらしている。そんな僕に、大いに光と刺激を与えて
くれた一冊が、この本だった。
たくさんの人(学生の方も若手社員も定年間際の人も家庭を守る主婦の方も・
・・)に読んでほしい「道しるべ本」である。
解説に代えて、と題された田坂さんの文章をご紹介しておこう。
社会起業家の残す最高の仕事とは何か?という定義のお話。心の奥深くに、ひ
とつの覚悟を持つべきというメッセージ、それはきっと深く僕たちの心に届く
はずである・・・。
もとより、社会企業家は、その歩みを通じて、様々な社会貢献と社会変革の
仕事を残します。それは、いうまでもなく、素晴らしい仕事です。
しかし、社会企業家が世の中に残すのは、実は、それらの素晴らしい仕事だ
けではない。
一人の人間が世の中を少しでも良きものにしたいと願い、精一杯生きたこと。
そうした思いを持った人々が、巡りあり、互いに共感し、力を合わせて
歩んだこと。
そして、その歩みの中で、一人ひとりが、人間として輝き、成長していった
こと。
その「後姿」こそが、社会企業家がこの社会に残す「最高の仕事」なので
しょう。
その後姿をつないでいく者、それが僕たちなのかもしれない。
渡邊さんが、素敵なご縁の糸を紡いで生み出された作品に、インスパイアされ
て、私たちも、何年か先の後姿を、この星のとこかに残したい・・・。
★★★★★+後姿
・仕事の意味を考えたい方
・世の中を変えたい方
・この星で最高の仕事をしたい方