おっちゃんのMoso・・・・
東京都杉並区にちょっと変わった学校がある。TCS(東京コミュニティ・ス
クール)だ。小学生が通う普通じゃない学校(学校教育法で正規に認められて
いない学校)である。そこで起きている“革新的な”試みを紹介したのがこの
本である。著者である市川さんが初代校長だ。生徒からは“おっちゃん”と
呼ばれている。 http://tokyocs.org/
ここで目指していることは「学び続ける力」の基礎を育むことだ。つまり、本
書のタイトルにもある「探求する力」を養うための面白いカリキュラムがある
学校なのだ。
テーマ学習がメインで、机の上で覚えるための学習ではない。意義あるテーマ
を設定し、そのテーマを探求する場に子どもたちを巻き込む、そして本質的な
問いと対峙する瞬間をつないでストーリー展開をしていく方法だ。そこに、や
らされ感はない。ここでの教師は、教え覚えさせる立場ではなく、テーマを設
定し、本質的な問いでストーリーを編むガイド役となる。
たとえばこんな具合だ。
栄養について探ってみよう・・・というテーマがある。
直球で問いを投げても小学生には面白くない。(探ってみたいと思わない)
そこで
きみたち元気だねー
うん、元気だよ
なんで元気なの?
だって、きちんと食べて、ちゃんとうんこしてるもん
というやりとりの中から
そうか、食べて、出すことが大事なんだ。じゃあどうして食べ物はうんこに
なるの?
という問いを出す。子どもは、本質的なところを揺さぶられる。
そういえば、どうしてだろう?って。
こうした本質に迫る問いの連なりが、探求ストーリーを編み出していくのだ。
また、詩を創るために外に飛び出し、現物や現人と出会うフィールドワークの
紹介がある。詩人の技を知り、物と対峙し、人と出会う・・・そんなプロセス
は、読者にとっても新鮮に映るだろう。心を啓かれていく感じがする。
フィールドワーク、プレゼンなど、読んでいてもわくわくするものがある。
教育とは何か。
この問いに対して、市川さんたちの努力は、一筋の光を社会に投げかけている。
自然に、自発的に学ぼうとする環境を復元する試みは、おおいに注目したいと
ころだ。
すべての小学生と、親と、先生に・・・読んでほしい一冊。
後半は、探求学習を編み出す先生の立場で書かれている。
テーマの構造を整理した6つの探求領域や、方法論としてのGRASPなどが
印象に残った。
とくに新しい教員像を定義するGRASPは、覚えておいてもいい。
これまでの教師像は、教える人としての教師と、教わる人としての生徒という
二項対立的なイメージが強かった。
探求型学習をめざす教師は、深い問いを発しながら、自立的な探求を促すファ
シリテーターの役割が強くなる。
そんな教員に求められるスタンス(こどもを掴む姿勢)が、GRASPだ。
G(Generate) 駆り立てる
R(Release) 見守り任せる
A(Accept)受容する
S(Show)見せる、魅せる
P(Participate)参加する
こんな風に何かの方法論やコンセプトを、ひとつの単語に集約する・・・この
作業は、意外に難しいが、面白い。なにか、やってみてもいいね。
★★★★★+探求しようぜ
・学校の在り方に疑問をもってる方
・こどもにもっとのびのびさせたい方
・こどもと学校を元気にしたい方