その時、歴史は変わった?
「大河ドラマ」より面白い。「そのとき歴史は変わった」より砕けた楽しさが
ある。ジョークと史実の微妙な間合いがあるこの作品は、今までに味わったこ
とのない感覚を覚える。
黒船来航、日米通商条約締結、幕末の動乱、明治の始まり・・・そんな歴史の
流れの中に、一人のフランス人、アナトール・シオン(架空の人物)が登場す
る。幕末の歴史の流れをこのフランス人が少しだけ変えてしまう物語。
ホントのようなウソのような・・・まるで、実際の史実がそうだったかのよう
な感覚を覚えるのが楽しい。
アナトール・シオンは、ゴールドラッシュのアメリカで、中浜万次郎(ジョン
万次郎)と出会う。物語はそんなシーンから始まる。
シオンは、親日のフランス人で日本語が堪能。やがて、運命の糸は彼を幕末の
日本に連れていく。そこで彼は、さまざまな人物と遭遇し、日本の歴史を変え
ていくのである。中浜万次郎、勝海舟、坂本竜馬、西郷隆盛、吉田松陰・・・
など歴史上の人物が個性豊かに描かれ、シオンとの交流を深めていく。
日米通商条約は、シオンのお蔭で不平等でなくなり、吉田松陰は投獄から助け
出され、明治の初めに日本の大統領選挙がおこなわれる・・・といった奇想天
外が展開は、えっ、マジかよ・・・と思いつつも、面白くてたまらない。
5分でも隙間時間があれば、ページをめくりたくなる・・そんな中毒性の面白
さがある。
歴史の授業は、史実を覚えるだけのモノクロなつまらなさがあったけれど、本
書のように、縦横の糸が繋がり、人の生きざまが織りなされた読み物は、実に
楽しい。
パスティーシュ(模倣品)というジャンルを、味わってみよう。
小学校のころ、夏休みの宿題で「渋垣退助」という物語を書いて提出したこと
があった。「板垣死すとも自由は死せず」(板垣退助)の話を知って、それを
もじって創ったものだった。田舎の穴場(子どもにとって)などを織り込んだ
大作(笑)だった。
歴史の知識、日頃会社で見聞きしている状況、知り合いの行動癖・・・など、
いろんなものを動員して、ちょっとしたストーリーを構成してみるのは楽しい。
そこに、人生のメッセージや思いなどをこめられたら、立派な小説になる。
なんか創造意欲を掻き立てられる刺激が、本書にはあるなぁー。
あなたも、どう? 人生はネタに満ち満ちている。
★★★★★+歴史は変わった!
・ジョークが好きな方
・幕末、明治の歴史が好きな方
・清水義典の世界を感じたい方