これは、ちょっと試してみたいよね。
私達は普段の生活で、看板を目にし、チラシをもらい、中づり広告を眺め、T
Vコマーシャルを見ている。さらにメール広告やウエブ広告ときりがない。
そんな中で、本書は、目からウロコの販促術を紹介している。
とってもアナログなのだが、なるほどと思わせてくれるのがうれしい。
どんな業態の商売でもリピーターほどありがたいお客様はいない。だから多く
のビジネスは、一回きりの新規顧客を集めるより、固定客を増やすことに力を
入れようとしている。
著者の経験知から、ほとんどのお店の場合、「一回きりのお客様」の比率はな
んと70%を超えているという。売上を上げるために、その一回客の比率をほ
んの10%程度下げる(つまりリピーターをふやす)だけで、いいという。
手書きのサンクスメール、口コミ、顧客情報の管理など・・・様々な方法がこ
の分野(販売促進)には、世の中で推奨されているが、本書には、とても興味
深く、かつ試してみたくなる方法が紹介されている。
中でも非常に面白いと思ったのは、店員さんスター戦略(アナログブログの活
用)だ。お店の前に黒板を立てて、働く店員の人がその黒板に日常のエピソー
ドを書いておくのだ。まさにアナログブログ。
なーんだ・・・なんだけれど、これが非常に効果的らしい。結果的に、商品を
売る前に、人をアピールする、気持ちを伝える、という人間的な営みが生まれ
るというわけである。ここで生まれる心のケミストリーは、安売りのチラシの
ように一回きりのお客さんを呼びこむものではなく、もっと深いものらしい。
価値観、物語、感情、人のぬくもり・・・こういうものが、これからのキーワ
ードなのだ。
不況の時代にも、売り方はまだまだこんなにもあったのか・・・と思える楽し
さと驚きのある本だ。
実は著者は、顧客管理のITツールを販売するのが本職。美容院や飲食系が顧
客という。そこにITのツールだけを売っていてもおそらくあまり商売繁盛と
はいかなかったかもしれない。
著者は、ITツールを売るときに(あるいは前に)、そのお店の売上がどうし
たら上がるかというソフトな部分(提案)をお勧めしたことであろう。
ITソフトを売る前に、商売繁盛のノウハウを提供する。うまくいったお客様
は、虜になっちゃう・・きっと。(これは僕の想像だけど)
本書は、その余禄の作品・・ということなのかもしれないが、それ自体素晴ら
しいことだと思う。
わが社の商品をどうしたら買ってもらうかに腐心する前に、お客様の立場にた
ってほんとうに考えるところから、ビジネスは回り出すのかもしれない。
今日の本は、そんなこともふと考えさせてくれた本である。
★★★★★+100回客
・売り方を変えたい方