2012年03月12日

ブータン、これでいいのだ ~ 御手洗瑞子 + あれから一年

 幸せの国の秘密・・・それは、なんとアレだった!

書籍情報

ブータン、これでいいのだ
御手洗 瑞子
新潮社
売り上げランキング: 248


この本のツボは?


 
ブータンと聞けば、GNH(Gross National Happiness)をすぐに思い浮かべる。
しばらく前に、新婚の国王夫妻が来日したのも記憶に新しい。

「貧しいけど、心が豊かで、国民がハッピーなんだろうなぁ・・・」なんて
勝手に想像していた。

しかし、本書を読んでみると、それはまぁ間違いではないのだけれど、思いも
よらない不思議な国であることに気づくことができる。そして、ブータンがと
ても魅力的に思えてくる。まるで、行ってきたような錯覚さえ覚える・・・と
は、言い過ぎだろうか。

本書は、ブータンのGNHコミッションで初代首相フェローという、なんだか
かっこいい立場で1年をすごしたTamakoさんのブータンレポート。

世界の知らない土地のことを知るのは楽しい。旅で見聞きするのもいいけれど
季節と人の生業がひとめぐりする1年くらい住んでみると、また、違った観察
ができる。本書の魅力は、著者御手洗さんが、とてもユニークな立場(首相フ
ェロー)で現地に融け込み、そしてコンサルタントのクールな視線を交じえて
リポートしている点だろう。

実に驚きのブータンがいっぱいある! たとえば:

 *ブータンの時間感覚は、実に鷹揚。ほとんどの人は、手帳もカレンダーも
  使わず、先の予定は、せいぜい、明日の午後くらいまで・・・(ひぇ)
  「2週間先の予定なんて立てられない。そんな先のこと、わかんないもん」
  これは、とある政府機関の長官の言葉だというから、推してはかるべし。

 *ブータンは、50年くらい前の日本の田舎みたいな感じらしい。
  信号も手旗信号だったりする。
  にもかかわらず、3Gが使えたり、iPad を売っていたり、車は新車が多か
  ったりする。

 *ブータンのMBAは、Married But Abailable、つまり結婚してるけど
  お相手できますよ・・・だとか。結構男女関係は緩いんだとか。

 *公務員の仕事は、9時-5時、冬は9時ー4時!
  しかも、初雪の日は、祝日になる!

 *田舎へいくと、今でも夜這いが普通に行われている。

とまぁ、なんだか幸福の国は、???な国である。

そして、人々の気質がまた面白い。
著者が観察したブータン国民の気質は:

 +許しあい、認めあうことで、いつも堂々と自信を保っていられる。
  (そのおかげで、なかなか失敗が直らなかったりもする・・)
 +プライドが高く、お互いノメンツを大切にする
  (そのおかげで、プライドが傷つくと、キレたりする・・)
 +よく笑い、よく怒り、ストレスをためない。
  (そのおかげで、時に派手な喧嘩もする・・)

なんだか、自由奔放ですなぁ。

この国が平和で、幸せが多い要因はいくつかあるようだけど、僕が一番、驚
いたのが、「女系社会」であるという点。男は、婿入りが普通なのだ!
完璧に、かかあ天下の社会らしい。笑

実は、僕も「マスオさん社会」こそ、家庭平和の決定打ではないかと、以前
から密かに思っていた。なんと、ブータンがまさにそれだった。(ふむふむ)

一方、国家的には、人口70万たらずの小国。インドと中国に挟まれて、チ
ベットのように外交的には微妙だろうなと思いきや、なかなかしたたかに、
中国とインドの牽制関係を利用しているという。

GNHばかりが先行して伝わるが、経済発展は、政治の4本柱の一つになっ
ている。「経済発展、環境保全、文化の維持促進、ガバナンス」→GNHと
いうわけだ。経済だけを見ていない・・というところが、やはり素晴らしい。

著者が、ブータンについて一番懸念しているのは、急速におカネとモノが社
会を変えつつあるという点。
どうやら、バブルもあるらしい。なにしろ、政府の歳入が371億円の国で
住宅部門への貸付総額が383億円という。みんな、先のローンの心配など
しないで、じゃんじゃん借りて、どんどん買う・・・この国の人は、かなり
脳天気な気質らしい。

ブータンは、いろんな意味で興味深く、著者の観察眼もまた面白い。

この本を読むと、いろんなことを人に言いたくなってしまうだろう。
(それだけ、興味深く、また、いろんな意味で考えさせられる内容がある)
(表紙の子供の写真、なんだか子供の頃の自分に似ているなあ:笑)

超~オススメですぞ!

(あ、御手洗さん、ぜひ、ジェイカレッジで講演してね~!)

おすすめ度は?

   ★★★★★+女系社会

知りたい?

   ・GNHとGDPは、対立概念なのか?
   ・許容範囲が広いとはどういうことか?
   ・壁いっぱいに描かれたポーとは何か?


■■今日のおまけ:( あれから一年 )

 あの日から1年がたちました。昨日は、各地で様々な追悼式が行われ
 ましたね。

 TVや新聞でたくさんの特別番組・記事が組まれていたのと裏腹に、
 どこかそこはかとない距離感を感じた自分に少し情けなさを感じました。汗
 まだまだ大変な思いをしている方がいっぱいいらっしゃいるというのに。

 時がたては、どんなことも薄れていくのは致し方ないことですが
 まだまだ未解決のことが一杯の現実は、忘れてはいけないですね。

 日本に生まれてきたたのは運命。
 東北に住んでおらずたまたま助かったのは偶然。
 かの地の人たちの苦難を共有し、何か手助けをと考えるのは選択。

 シーナ・アイエンガー教授が言うように、運命、偶然、選択という3つ
 の要素が、私達の人生を左右しています。
 
 ありふれた日常がかけがえのない日常であることに気づくこと、
 感じたことを敢えて口にしてみること、
 忘れないように気にかけること、
 思い立ったら行動すること、
 選んでいるんだと意識すること、

 ART OF CHOICE を楽しみたいですね。  
 

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■■ 新刊応援!(こんな本もお勧め!)


▼「「ありがとう」が人と社会を幸せにする」~野口吉昭さん

  思わず目頭を抑えたくなる素敵な素敵な会社のエピソードが紹介
  されています。
  成功する会社には必ず『ありがとう』が飛び交っているようですね。
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▼「坂の上の坂」10万部突破! ~ 藤原和広さん

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▼「「小さな気分転換」で人生を大きく変える方法」~鶴岡秀子さん

  佐藤伝ちゃんの本と一緒に読むと、さらに楽しいと思います。
  つるちゃんの講演会を聞いてよかったと思うかた、ぜひ!

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Posted by webook at 2012年03月12日 23:31 | TrackBack
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