【官僚病の起源】
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岸田 秀
昭和8年 香川生まれ
早稲田文学部卒 精神分析者
和光大学人間関係学部教授
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新書館 1300円
97.2.5 初版
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中島某とかいう大蔵官僚の不正や、薬害エイズ問題で
血友病患者にエイズ罹患の危険を犯してでも厚生省の
メンツと天下り先の製薬会社の利益を守ろうとした
厚生官僚の体質などを 、太平洋戦争当時の 軍部官僚と
対比させながら、根っこは同じであると分析しています.
この著者、精神分析者という肩書にあるように
官僚体制の原因を精神分析的に解析しています.
官僚の不毛は、その人柄によるというより、組織が
自閉的共同体化してしまうところにあると言っています.
官僚組織でも 企業組織でも 共同体化してしまうと
内的には安定しても、結局は "役に立たない" あるいは
"かえって害を及ぼす" ものになってしまうようです.
共同体化の話は、堺屋太一の"組織の盛衰" でも
同様な話がでてきます. 又、共同体の中での官僚の
生態は 宮本政於の本に面白く書かれていますネ.
日本人は総じて 有能で清潔な支配者に 支配されていたい
という願望があり、そういうものが 戦前の 軍部官僚や
今の各省官僚を生んだのだといいます.
このあたりの 国民性質の起源を 日本国家の起源(神話の
世界)まで遡り 分析していて、ちょっと変わった視点が
斬新です.
日本国民は、戦前、天皇のためにに命を捧げる有能で
清潔な軍人という幻想を抱き大失敗をした.その後
やはり 有能で清潔な支配者に支配されたいという願望
を捨て切れず、或る事件をきっかけに又 官僚幻想を
許してしまった. その事件とは、戦後配給以外の米を
食べる事を拒否して餓死した裁判官のことだそうです.
上記の官僚の話のほか、日本の歴史を精神分析する
といった、ちょっと変わった内容が書かれています.
いずれも ”大航海”という雑誌(96)に投稿された
記事をまとめたものです.
この著者は、渡部昇一のように 結構はっきりと
物をいうひとで、やや独断的な視点のような気も
しますが、小気味のよい書きぶりの人です.
官僚/組織/歴史に興味のあるかたオススメ
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おすすめ度
☆☆☆☆
真之助