【高麗奔流】
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深田祐介
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文芸春秋 1524円
97.4.10 第1刷
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北朝鮮が韓国へのトンネルを何本か掘っていた
というNEWS が かつてありましたが、この本は
それを題材にして北の南進トンネル作戦を描いた
小説です.
日本国籍でありながら 父を北朝鮮、母を韓国に
もつ 純子(ちゅんこ :韓国風に濁音なし) と日本の
商社マン 加納吉次郎、それに韓国の女工作員申(シン)
が、韓国とザイールを舞台にスリリングな
軍事謀略を繰り広げます.
なんで ザイールかって?... ザイールは元コンゴで
ほとんどのアフリカの国家が社会主義だったのに対し
ザイールは唯一米国寄りでした.ところが 冷戦終結
後、急速に 米国はザイールから撤退をはじめた為
朝鮮の金日成とザイールのモブツ大統領が近付き
はじめた. こんな背景があり、ザイールのコバルト
と韓国の軍事能力とが相互にからまって、この
物語は展開します.
(このあたりの政治情勢は、結構リアルで、この本を
よんだ1週間後に、モブツ大統領が政情不安の為亡命か?
などという日経の記事が目につきました)
そうそう、ザイールは マラリアの国ですね.
以前紹介した 藤田広一朗の"空とぶ寄生虫"を
よんでおくと、この本は 1.2倍くらい面白さが
増えます.
ザイールは 御多分にもれずフランス語、この本の
なかにも フランス語がふんだんにでてきます.
もちろん 韓国語も.
北朝鮮の貧しい現状や破綻している社会主義の状況
それにザイールの国情等 とてもコンテンポラリーな
題材をうまく利用した虚構となっています.
最近見聞きしたnews から、ひょっとすると
このような話は ホントにあるかもしれないって 感じ
させるところが、魅力です.
話のながれは、漫画で言えば ゴルゴ13 てとこで
しょうか.
因みに この本 は、"オール読物" 96.5~97.2まで連載
された 赤道奔流を 改題加筆したものです.
北朝鮮に興味のあるかた
ビッグコミックを毎月2冊読まれる方
フランス語の素養のあるかた
マラリアの好きな方(?)
におすすめ
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おすすめど
☆☆☆☆☆
真之助