【ヒトはなぜ”いじめ”るのか】
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大島 清
1927年生まれ、東大医学部卒
京大名誉教授、愛知工業大学教授
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現代書林 1500円
97.4.12 初版第1刷
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『いじめは、肥大化した人間能(大脳真皮質系) の失敗作だ』
というのがこの本の考えかたです.
文部省の調査では、95年の全国小中高等でのいじめ件数は 6万件
を越え、その一半数近くが中学でおきているそうです.
このいじめの問題を、動物行動学と大脳生理学を紐解きながら
考察したのが本書です.
大脳生理学では、能の仕組 (は虫類能、動物能、人間能)を 脳の
三層構造(脳幹、大脳辺縁系、大脳新皮質系)で説明したり、目耳
鼻手足などからの感覚信号がの脳を活性化させる話など、脳の
働きを比較的わかりやすく(ちょっとかったるく)解説しています.
又、
動物行動学では サルの行動形態を引用して、「人間のような陰湿な
いじめはない、だから 人間のいじめは 、人間脳の失敗作だ.」
といいます.
(サルの子供殺しの話がでてきますが、動物行動学はやはり天才
竹内久美子にまかせたほうが面白そうです)
では、どうすればいいか?、結論は教育.
育脳学が肝心と釈いています.
IQ を高める知識教育にかたよると、五感を通じて知る喜びが
うすれ、脳の発達に影響がでる.
「ドイツのシュタイナー学校では"パン" を理解させるために、
児童達に、畑を耕させ小麦を蒔きそれを収穫して粉に挽き、
パンに焼いて食べさせる...という授業をしている」そうです.
この教育の中で、子供は"この土は生きている"とか"この土は
疲れてるから、肥料をやろう"など素晴らしい反応を示したとか.
「日本でも"土" を知る授業はやっている.但しそれは、どこからか
土を持ってきて、ビーカーにいれ、水に溶かしてリトマス試験紙
でしらべ、堆積のようすから、含有物がなにかを調べる'知り方"
である」
著者は、それを、「土との間に冷たい距離をおいて、単に知的な
情報を得ているにすぎない」と指摘します.
「もっと暖かい、五感に訴える教育を、もっとEQな教育を」9才まで
にすべしと言います.
そんな日本にはやくしたいなあ.
この本、著者の専門、大脳生理学、動物行動学に 最近のいじめ事情
と教育事情を混ぜ合わせただけの感じがして、なんだかFocusの甘い
感じがしました.
(大島清の本では、【人生は定年からが面白い】のほうが、面白い!)
いじめと脳とサルに関心のあるかた
会社で部下をいじめ、上司にいじめられている方?
家庭で配偶者や姑さんにいじめられている方?
おすすめ
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おすすめ度
☆☆☆
真之助