1997年07月29日

【エアーフレーム (上)】... マイクルクライトン 97.7.29...☆☆☆☆☆

【エアーフレーム 上】 (AIRFRAME)
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マイクル クライトン (Michael Crichtoon)
酒井昭伸 訳
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早川書房 1800円
97.5.31 初版
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架空航空機製造メーカー ”ノートン”社がつくった大型旅客機が
香港から LAX へ飛行中、異常運航が発生し多数の負傷者と死者
がでた.....というところから物語は始まります.
(ほんとは その前に 旅行客が機内でビデオを回しているところ
からはじまって、そのビデオが結構事故原因の究明に使われたり
するんですが)

機長は 乱気流に見舞われたと通報したが、どうもおかしい...
この事故を巡り、ノートン社 品質保証部(Quality Assurance)
の副部長(Vice president) の ケイシー シングルトン という
女性を中心にストーリーが展開します.
シングルトンを中心にノートン社の事故原因究明チームが結成
され、そのアシスタントに何故か 航空素人のリッチマンと言う
若僧がつきます.例によって、このお兄さんがとんちんかんな質問
をするので、シングルトンが、"このシロウトが!" と舌打ちし
ながら 航空機のシステムや 整備方式、耐空性の承認などを解説
してくれます.
この手法は 一般読者に 航空機の専門用語を解説する手法と
しては よくやる手でしょうか.

事故を起こしたのは香港のトタンスパシフィック航空なので、
事故調査の究明は当時国(香港の司直)が行うため、クルー達は
帰国していしまいます.又 事故記録の手がかりとなるQAR とか
DFDR などもうまく手にはいらないか、data がめちゃくちゃだっ
たりして 事故原因の究明ははかどりません.

一方、ノートンエアクラフト社は中国との大型取引が進行中であり、
事故原因の究明を急ぐ事情があります.さらに その商談には
相手国に機体部品の一部を製造させる噂も不随し、その部品という
のがなんと航空機の重要要素である”WING" であることから、労働
組合との係争にもつながる、同時に JAA も承認を出し渋る...
などといういくつもの縦/横の糸がはられています.
さらに、マスコミ(TV) が 特集を組むために いろいろ嗅ぎ回って
きます.レポーターとシングルトンとのやりとりも、その業界の
裏側をかいま見る感じでなかなかのストリー展開をします.

離婚女性がキャリアーウーマンとして体をはって働くアメリカ社会
の現状をうまく抑え、シングルトンという女性は、離婚して子供が
いるという設定にしています.

Auto pilot の Overideや、Engine のREVERSE extend 等 可能な
原因をなかなかリアルに追及しています.そして...
さらに事故原因の謎の一つに "slat の予期しない extend " を
あげ、整備記録の調査やシミュレーターによる試験などあり、この
あたり なかなか専門的なバック(取材)をもって書かれています.

業界ものは その業界の人が見ると "アレ そんなことはないぜ "
というような点が目について 嫌気がさしますが、これはそういう
点が少ないです.それだけ正確な情報取材をして書いたという
ことでしょうか.
著者のM.クライトンは "ジュラシック パーク"や TV 番組 "ER"
の原作者で 業界内部の事情に相当精通している印象です.

航空業界の技術の方には、"あれ これって、あのインシデントを
ヒントにしてるなあ" なんて事もあり、結構興味深く読めます.
結末は 下巻に....

航空ファンのかた
航空業界に関係あるかた
おすすめです.
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おすすめ度
☆☆☆☆☆

Posted by webook at 1997年07月29日 16:50