【エアフレーム (下)】
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マイクルクライトン
シカゴ生まれ.ハーバードメディカルスクールを69年に卒業
ジュラシックパーク、ER 等著作多数. LAX 在住
酒井昭伸 訳
1936年生まれ、早稲田政経卒 翻訳家
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早川書房 1800円
97.5.31 初版
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昨日(上巻) の続きです.下巻は、ストーリー展開が加速して
一気にラストまで読めてしまいます.
上巻では、航空業界の内幕をさらけ出し、規制緩和に潜む危険性
や FAA とマーカーの内情等をあぶりだすのかと思ったら
これらの航空業界事情はたんなる材料に過ぎなかったのです.
本当は マスコミ報道のありかたに一石を投じるものだった....
なんて..、驚きです.
随所に散りばめられた ジクソーパズルの断片が 最後に見事な
総合体として示されますが、それまでのスリリングな展開から
おもわず Ms.シングルトン頑張れ! と応援してしまう自分を
発見します.
*航空機製造向上の労働組合との確執
*企業トップの陰謀
*エアバスと米国エアクラフトメーカーの競合と政治的圧力
*規制緩和下、正規航空機部品でない模造品による整備品質低下
*HUD(headup display) による整備manualの閲覧
*VTR の特殊処理
*マスコミ報道の自由と法的責任、そしてショウ化してしまった現状
などいろんなジクソ-の パーツはそれぞれ有機的に繋ぎあわされていて
う~ん スゴッ! と思わず唸ってしまいます.
マスコミ報道は、ある事柄に特別なバイアスを掛ければいとも
簡単に情報操作ができる.事実を伝えてはいるが、全てではない
ことも十分有り得る.報道の自由を楯にきて実際は報道の暴力を
行使していることもありますよね.
そんな マスコミの対応が、この本のクライマックスにでてきます.
N22 の事故を "ニューズライン" の記事にして全米を釘付けにし
ようとする 若いプロヂューサー" ジェニファーマローン"と QA (
品質保証部)兼広報担当の"ケイシー シングルトン" の戦いになり
ます.
誠実に対応しようとするシングルトンはとことん"真実" を追及す
るためいろいろなリスクを犯し綱渡り的な行動をします.
そこがハラハラドキドキでもあります.
名うてのインタビュアーへの対応の為 シングルトンが マスコミ
対策専門というおばさんに知恵を授かる場面がありますが、ここは
とても重要な場面です.多分映画になったらいいシーンになると
思います.(空手キッドが師の教示を受けているような感じの処です)
女の戦いは 事故機による Fight test とその後のVTR解析の検証
場面でハイライトを迎えます.
なかにでてくる企業は ボーイングもダグラスも本もの、エンジン
メーカーのRR、GE、PW も実名、FAA や JAA も全て実在のもの.
又、アロハ航空の737事故やアメリカンのDC10事故は 実際の
例をそのまま引用しています.
架空のものは N22(これも架空の機種)の製造会社 であるノートン
エアクラフト社と一部下請け企業などです.
N22 の事故も 実は実際に起きた事故とそのFAA改善勧告などを参考
にして構想されており、非常にリアリティに富んだものです.
訳者の解説によれば、クライトンは 「マスコミ報道は、以前は事実
を可能な限り客観的に伝えるためのガイドラインがあったが、最近は
報道番組がショー化し、あまりにも TV の魅力に甘んじている」と
憤りを感じ この本を書いたとか...
シングルトンとマローンの女の戦いはこれを正に表現しています.
ちなみにこの作品はディズニ-が映画化の権利を獲得したそうです.
又、クライトンのホームページに、ノートンの概要、保有機の概要
フライトシユレーターなどのコンテンツがあり、ちょっと覗いて
から読むと面白いかも (結構充実している).
http://www.randomhouse.com/crichton/
原作英語版は96年の出版ですが 96.5 バリュージェットの事故、
96.7 TWA機の事故があり、旅客機の安全に感心がたかまっていた
だけにベストセラーになり、200万部も売れたそうです.
「航空業界の実態をレクチャーされながら、息つく暇もなく一気に
読み進むうちに、業界の抱える問題やな上が一通りわかる」という
スタイルの本で、インダストリースリラー(業界内幕もの)です.
マスコミ業界と航空業界のふたつをハラハラしながら覗ける
お得で楽しい本といえます.
航空とマスコミがお好きな方 是非 どうぞ!
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オススメ度
☆☆☆☆☆
真之助
Posted by webook at 1997年07月30日 16:52