1997年11月10日

【次はこうなる】...堺屋太一97.11.10 ...☆☆☆☆☆+☆

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【次はこうなる】

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堺屋太一
1935年 大阪府生まれ。東大経済学部卒業とともに通産省に入る。
通産省時代に日本万国博を企画、開催。1978年 通産省退官し執筆活動
に入る。著書:団塊の世代、油断、知価革命、秀吉など多数。
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講談社
1600円
97/8/27 第1刷
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この本、相当な人気もので、図書館でもリクエスト後1ヶ月以上たってやっ
と読むことができました。(35万部くらい売れてるようです)

政治も経済も社会のシステムもメロメロになってしまい、もはや“遅進国”
となった日本の現状を分析、その「次」はこうなる、こうするためには、
今どうすべきかという この国の未来への糸口を書いた本です。

前半2/3は、21世紀を前に閉塞状態に陥った日本の現状を、①もはや
不用のお荷物と化した官僚主義体制が生む社会のさまざまな矛盾と弊害、
そして、②小子化、高齢化社会にともなう社会の前提の崩壊
などで解説します。そして、底流にながれる平等主義を日本人が捨て去る
べきものとしています。

堺屋太一の魅力は、現状の社会システムの惨状を過去の歴史をひも解いて解
説してくれるところです。
かつて経済大国だと有頂天になっていた日本は、規格大量生産の工業社会で
あった。その推進役となったのも、また今では弊害となっているのも元をた
どれば昭和16年体制だといいます。政治経済教育など社会の重要なシステ
ムはほとんどが昭和16年にできていたようです。
(教育は昭和16値の国民学校令、医療は昭和16年の「標準医療」など多
くの官僚支配のシステムは昭和16年ころにまで溯るようです)
官僚支配の日本をこのままにしておくと太平洋戦争時の一億玉砕と同じにな
ると警鐘をならします。このあたりの認識は多くの識者と一致するところで
すが、過去の歴史を分かりやすく引用するところがいいですね。
戦争前の軍人も今の官僚も「組織の権威(面目)と従来からの経緯、そして
自らの立場を守ろうと倫理倒錯に陥っていた」と厳しく非難します。
その結果、今ではこれがゆえに日本は“世界の田舎”、“外される国”とな
ってしまっています。

堺屋太一のもうひとつの魅力は統計的な数値をわかりやすく表現し未来の予
測につなげる点です。
いかに日本が“はずされている”かは、たとえば
観光客(出1600万人/年、入300万人/年、 業務を除けば約10対1)
投資 (出2兆円/年、入20億円/年、 約100対1)
その他、航空輸送もソウル経由で海外へ行く人が増えているし、船舶の寄
港も年々減っている-香港、プサン経由でくる方が安いため-など
ひところの日本たたき(バッシング)でなく日本飛ばし(パッシング)にな
っている状況を解説しています。

小子化時代の未来は厚生省の数値を引用していますが、「出生率が今のまま
なら2007年をピークに年々人口が減少し2051年には日本の人口は1
億人を割る、100年後にはスパイラル的に減少して6000万人になる」
そうです。95年の出生率は1.43で世界的にはドイツ、イタリアと並ぶ
小子国とか。
一方、労働人口は今がピーク、いろんな職場での高齢化がすすんでいる。
『林業70才、農業60才、小売業50才、工場40才、OL30才、フリータ
ー20才』というのが俗にいう労働年齢だそうでこれが、さらに10年後に
どうなるか...恐ろしいものがありそうです。これでは、林業も農業もな
くなりそうですね。
また、出生率の低下とともに進行した核家族化は“一世代都市”なる現象も
生みそうです。東京の多摩ニュータウンや大阪の千里ニュータウンは当初の
入居者が年をとるのとほとんど同じテンポで高齢化しつつある。このため
住居者が50才台以上となり、産婦人科と小児科医は仕事がなくなってきて
いる。
統計数字は本来味気ないものですが、こんな風な解説はなるほどって感じが
します。

後半は、現在橋本内閣が進めている大改革6+1(行政改革、財政改革、
金融システム改革、年金/医療保険などの社会保障制度改革、経済構造改革
そして教育改革。+1は首都機能移転)を本物にするための処方箋と、“官
主”から“民主”への文化革命を述べています。
現体制を守ろうとする官僚の手によって、改革は不可能だということを過去
の歴史をいくつか引用しながら説明していますが、このあたりは堺屋太一の
真骨頂というところです。
(歴史の先生もこういうのを教えてくれたらいいのですが...)

また、「官僚文化」克服する一つのアイデアとして首都機能の移転を以前か
ら主張していますが、ワシントンなど世界の例を引用してそれなりの説得性
があります。
さらに、この国を動かすものはなんといっても“人”であり、最後の章
<新・人材革命>では、”試験上手な”人材の危険性を説きつつ求められ
る人材像をかいています。

『次』はこうなるというタイトルですが、次をズバリ予想というのではなく
“今はこうだ、今我々がどうするかに次がかかっている”内容でした。
歴史からの引用と統計数値の読み下しさらに若干の精神分析が加わった大変
興味深い本です。

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日本のお父さん/お母さんの方に
日本のサラリーマンとお役人の方に
日本の未来を憂える方に
おすすめです。
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オススメ度

☆☆☆☆☆+☆

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真之介@Webook of the Day
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Web .. . . 。 o O 〇 Kuribako ★
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Posted by webook at 1997年11月10日 17:44