人間にも原価償却があるの?
【償却済社員、頑張る】
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|著者:安土敏(あづち・さとし)
|講談社|2003年 07月
|ISBN:4062119285|1,800円| 349P
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企業にお勤めでそろそろ定年・・・
ついこの前、定年を迎え今は自由の身さ・・・
そんな方、この本を是非お読みいただきたい。もちろん、若い方もとても
興味深く読める。(なにせ、やがては自分のことかもしれないから)
本書は、ある商社(大日本物産)を定年退職した元総務部長、出雲修平を
主人公に、企業を卒業したいわゆる「償却済み」社員の夢と挑戦を描いた
物語である。
修平は、定年後は濡れ落ち葉的なおじさん。家の中では居心地が悪い。
運転免許を持たなかった修平は、ある日ゴルフの帰りに悔しい思いをする。
会社時代からの腐れ縁が続く近藤悠太郎にそそのかされ、運転免許をとろ
うと決意する。元経理部長だった近藤悠太郎は、悠悠自適でいつも修平を
ひやかしては面白がっている。
近藤のほか、大日本物産の水があわず、半ばイジメにあって早期退職をし
た「教授」こと鷲津、退職後に惣菜屋チェーンで成功している「ヒトマロ
」こと財前、修平がむかし愛情を抱きながら悲運の別れをした里実、など
が登場し、償却済み社員の人生模様を彩っていく。
元総務部長だった修平が、惣菜屋チェーンの社長をしているヒトマロに、
自分を総務部長として雇ってくれまいか・・・と頼み、一蹴されるシーン
は悲哀を感じさせる。
たくみに張られた伏線や時を経て再燃する恋心などが織り込まれ、どこに
でもありそうなストーリーでありながら、ワクワクさせてくれる。そして
、どこか自分のことのような錯覚を誘うところがこの物語の秀逸なところ
だ。思わずクスリとしてしまうところがなんともいえない。
定年後の人間達が、俺たち原価償却済みだけどわずかながら残存簿価があ
る。したがって、それをたてに会社のフリンジベネフィットを利用しても
いいんじゃないか(これを社価という)。役職定年をした人にありがちな
おしゃぶり精神をちょこっと揶揄する。一方で価値ある人材をまるでモノ
のように償却あるいは除却してしまう企業のありかたもチクリと批判する。
そして、なにより人生にチャレンジして生きていく楽しさや喜びをそこは
かとなく表現しているところに爽快さを感じる。自分自身や家族とも向き
合う発見もいいねぇ。映画やドラマにしてみたい作品である。
本書はスーパー・サミットの元会長の作品。BOOKS GORO店長の
今さんのオススメで買った。いや、すんごく面白かった!
今度、安土さんに会いに行こう!(今さん安土さんによろしく)
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★★★★★+償却済み!?
・そろそろ後定年を迎えるっていう方
・悠悠自適な生活の方
・初老の人生を見つめてみたい方