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|著者:佐藤修
|日経BP企画/日経BP出版センター|2003年 10月
|ISBN:4931466931|1,500円 |206P
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個人が「働く」ことの意味を問い直す本である。
企業が、社員とどのように対峙していくかを考える本である。
これまでの日本企業におけるキャリア開発は、「とにかくすべて会社にま
かせなさい」スタイルだった。つまり、社員の長期的なキャリアパスを企
業が設定して、それに必要な能力やスキルを本人の意思とは別のところで
身に付けさせる企業主導型が多かったという。社員もそれに依存して、自
らのキャリアを開発しようなんて思いもしなかったわけだ。会社という枠
のなかで生きてこられた・・・そんな時代だったのだ。
ここにきて、自律型人材が求められるようになってきた。そこに「パーソ
ナルブランド」つまり「自分の価値」というコンセプトが生れてくる。
自分の市場価値を高め、いかにしてそれを他者に認知してもらうか。そう
いうことが個人にとって重要になってきたようだ。
本書は、日本IBM,トイザラスを経て、ナイキジャパンで人事担当役員
を務める著者が、欧米流のキャリア開発を解説した本である。
時代が変わってきたという「風」を感じるにはとてもいい本である。
で、どうするの?というところは、少々食い足りない気がするが、それで
も十分に「気付き」を与えてくれるところがいい。
個人の描く自分のキャリア開発を企業が支援するという枠組みは、大いに
歓迎したい。今朝の新聞でも日本IBMが、幹部社員にフリーエージェン
ト制のようなものを適用すると報じている。コスト削減的な意味合いもあ
るが「社員の自己実現を促す環境を用意した」という大歳社長の話は、あ
る意味歓迎すべきことかもしれない。
本書では、パーソナルブランドについて、企業側のロジックで語られてい
るような気がする。つまり、個人のコンピテンシーを定義するものとして
「リーダーシップ」「対人感受性」「人間関係構築力」などといった人事
考課で点数をつけるようなものが基準になっているからだ。それはそれで
大切なのだが、なんか違うような気もする。つまり、個人のブランドを測
るモノサシも自分で用意すればいいのじゃないか・・と思うのだ。
あいつはずっとWeblogをつけているとか、鳥のことばっかり研究し
ているとか、ニッチなものでもいいんじゃないかと・・。
その他大勢の中で、彼のリーダーシップは9、君は8なんて言われるより
オンリーワンのニッチを目指すほうがパーソナルブランドを作る上ではい
いのではないか・・・なんて、本書の本筋とは違ったことを考えてしまっ
た。(著者さんごめんなさい:笑)
そんなことを考えさせてくれただけでも、価値ある一冊である。
PB(Personal Brand) の時代ですなぁ。
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★★★★☆+PBな時代
・自立したいっていう方
・自分の価値を意識しはじめた方
・社畜にはなりたくないって方