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|著者:鈴木猛夫
|藤原書店|2003年 02月
|ISBN:4894343231|2,200円 |262P
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なるほど、そういうことだったのね。と納得の一冊である。
イラク戦争のウラでは米の石油利権の覇権争いがうごめき、アメリカの台
湾政策は中国という巨大マーケット戦略が基本にあり、真珠湾攻撃は、ア
メリカの・・・と、これまで様々な政治・経済、国際情勢などの舞台裏に
は、アメリカの覇権戦略が見え隠れしている。
本書は、アメリカの食戦略の話。
今日、私達日本人の暮らしの中で、パン食はもはや切り離せないほど定着
している。なぜなら、私達は学校給食というシステムの中で、毎日パン食
に慣れ親しんできたからだ。(ぼくなんか、パンの耳をもらって帰るのが
うれしかったなぁー。お袋がアゲパンにしてくれた)
牛乳もしかり。
「これほど短期間に食生活が変わった国はない」という。ごはん・めしの
食生活が、パン(トースト)・コーヒー・ハム・サラダみたいな「近代的」
食事に変わったのは戦後のわずかな期間だったのだ。
本書は、戦後の食糧難解消のあと国(厚生省)によって行なわれた栄養教
育、栄養改善活動が、実はアメリカの周到な小麦輸出戦略にそって行なわ
れていたものだった・・と、その隠された事実を紹介する。
1953,4年頃、アメリカは3000万トンもの膨大な小麦の在庫を抱え(ちなみ
に日本の年間のコメ消費量は1000万トンである)、その余剰農産物の処
理(輸出)は、喫緊の課題だった。アイゼンハワー大統領は、MSA法や
PL480法などを制定し、国家戦略として余剰農産物の処理をすること
になる。日本はといえば、金なし、食料不足、国力不足という状況の下で
アメリカの小麦戦略は願ってもない内容であった。こうして、日本人の「
近代的!」食生活の源流がスタートすることになる。
著者のスタンスは、そんなアメリカの経済(農業経済)戦略があったから
悪いというのではなく、事実を事実としてしっかり認識した上で、ものご
とを考えましょう・・というものだ。だから、好感が持てる。
戦後の食事事情の変化、森欧外(林太郎)も登場する米食と脚気騒動の話
など、非常に面白い事実を丹念にたぐりながら、食と健康を考えさせてく
れる。著者渾身の作品。
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★★★★★+小麦戦略
・食に関心アリっていう方
・今日の朝食にパンを食べた方
・食文化について考えたい方