【大相撲の経済学】
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|著者:中島隆信
|出版社:東洋経済新報社|2003年 10月
|ISBN:4492313303|1,600円| 204P
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相撲は日本の国技である。野球やサッカーのようにプロスポーツであると
同時に文化的な要素も持っている。
そして、伝統や文化というベールのもとに日本相撲協会の内部は、一般に
は知られていない。
本書は、大相撲(相撲協会)を経済学の視点から分析した本である。
横綱の給料がいくらかといったものではなく、角界のなかでの経済的イン
センティブや組織的なモチベーションの仕組み、モラル維持の努力などの
分析である。なかなか面白い。
力士総当たり制がないこと、外国人力士が増えたこと、八百長問題がいつ
も噂されること・・など「??」な現象には、実はそれなりの合理的な理
由があったのだ。
力士の給与体系は、収入の安定性や年功賃金的要素がある。また曙がK1
に転出してしまった遠因ともいわれる年寄株は年金証書みたいなものであ
る。また、番付は人事表である。大相撲は現役力士と年寄という「社員」
を有する会社である、八百長は、社内協調ともいえる。
などなど、われわれの知る会社の生業と比較しながら展開する。
相撲も今は一時の人気が低迷し、他のスポーツ(サッカーや野球など)と
の競争にさらされている。また人材確保という点では、リソースを外国人
に求めなければならない情況に拍車もかかっている。そして年寄株という
年金問題にも苦しんでいる。
著者は「だから大相撲は大胆な構造改革が必要である」と言っているわけ
ではない。
なぜなら、相撲協会はオープンなスポーツの側面と、閉鎖的な文化的側面
があり、すべてをグローバルスタンダードや経済学的な見地から批判を加
える必要はない、からだ。
伝統の継承というのは、長い時間軸で物事を考える必要がありそうだ。
サッカーの経済学とか、競馬の経済学とかも読んでみたいねぇ。
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★★★☆+はっきよい
・相撲がお好きな方
・相撲協会の不思議を考えている方
・角界を覗きたい方