【大学は学生に何ができるか】
「学生を元気にさせる」大学改革とは
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|著者:増田晶文
|プレジデント社|2003年 12月
|ISBN:4833490978|1,500円|
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4月から国立大学は法人化され大きな転換期を迎える。また、2009年
には、大学の定員と受験者数がほぼ同じになるというこれまた大きな転換
期がくる。そうした中、大学とはなんだろう・・・ということを考えさせ
てくれる大学が金沢にある。
金沢工業大学。半年くらい前までは、僕は名前も知らなかった地方の単科
大学である。この大学は不思議なところで偏差値は低い(40前後。ちな
みに東大工学部73、京大工学部70)が、大学改革や教育改革というモ
ノサシでは、非常に優秀な評価を得ているのである。朝日新聞が年一回発
行している大学ランキングの「教育分野の大学改革で注目する大学」で、
有名私立を退け、第5位(2002年)など、地方の一工業大学が「なぜ
?」と思える現象があるのだ。
本書は、この金沢工業大学の教育改革の取組みをドキュメントした本であ
る。大学の特長は、「夢工房」と「工学基礎教育センター」。
もちろん、ハコが素晴らしいということではない。そこにある教育の哲学
こそが注目されているのだ。
夢工房は、ロボットコンテストや、ソーラーカーなど学生たちがやりたい
ことをかなり自由にやらせてくれる環境だ。そこには、ただの仲良しクラ
ブとは違う、ベンチャー的な要素や、人間力を養う環境がある。
また、工学基礎教育センターは、そのモットーが「出来たら褒める、出来
なければ励ます」というだけあって、学生の能力を引き出す努力が非常に
よくできているらしい。
そういえば、「あんどんくん」がロボコン大賞に輝いたロボットコンテス
トはTVでみた記憶があるなぁ・・。
本書では、金沢工業大学で学ぶ学生(芹澤くんや東上くんなど)との対話
や、著者自身の学生体験などを織り交ぜながら、大学の本来のあり方を浮
き立たせている。
学生に対するCSを推進する石川学長や、無力を知るところから工学はス
タートするという飯野教授の言葉も印象的だ。(詳しくは本書で)
何かが始まっている・・・そんなワクワク感を味わえる本だ。
不思議なご縁で、実は、僕もこの大学(院)に関係することになりそうだ。
今、熱い注目をあびている大学だ。
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★★★★☆+燃えろ学生諸君!
・大学のあり方を考える立場の方
・大学受験を考えている方(とその親)
・人を育てる必要性を感じた方
たしかに、そこの大学は教員研究棟を置かなくなってて、実習室・実験室ゼミ室の一角に「教員コーナー」を配置するようになっている。
これだけみると、教員の教育現場重視主義の典例とされるが、教員組織の改革をどうも見てきていないように感じる。
学生学習・研究サポート体制として、従来の専任教員とそのカリキュラム補完非常勤講師という配置だけでなく、教育サポートのための「夜回り教員」「学習支援教員」をリタイアした企業人や教員暦のキャリア社会人等からなる特任教員を夢工房だけでなく適所に置いているのである。
東大など大学院大学でも近年、定年になったキャリア教員や社会人・企業などから「院生の論文作成・研究実験支援」にあたって頂く「特任教授」制を導入している。年俸400万円と500万円の任期制特任を公募に出したところもあった。小職の同僚だった方も、9月任期で母校の大学院特任になられ、論文の書き方とか資料収集の進め方などの研究指導の支援を行って定年後を充てておられる方もいる。
こうした人事教員組織の流動性を伴わない教育改革は、専任教員のノルマ嵩上げという労働強化しかもたらさない。
Posted by: 富山通りもん at 2006年11月04日 22:53