2004年03月02日

■四千万歩の男忠敬(ちゅうけい)の生き方(井上ひさし)

inou.bmp
 したたかな愚直が地図を残した。

【四千万歩の男忠敬(ちゅうけい)の生き方】
        
   =========================================
   |著者:井上ひさし
   |講談社|2003年 12月
   |ISBN:4062739054|533円|278P
    =========================================

 伊能忠敬は、江戸時代に生きた下総の名家の旦那様。50歳で隠居後、7
 2歳まで生きた。そして、忠敬のすごさは、隠居後の活躍である。今で言
 うなら定年後に、歴史的な大事業を成し遂げるようなものだ。52歳でケ
 ンタッキーを始めたおじさんみたいなもんだ。(ちょっと違うか)

 著者の井上ひさし氏も「一身にして二生を経る」というライフスタイルに
 注目する。隠居後に星学暦学の勉強をはじめ、56歳から72歳までの1
 7年間で三万五千キロ、約四千万歩を歩き日本地図を完成させたその愚直
 な生き方は、高齢者社会に突入した現代に刺激を与えてくれる。

 伊能忠敬は精密な日本地図を始めて作った人として有名だが、地球の円周
 を実測・計算した人でもある。井戸1度の長さを28里二分(110.75Km)
 として歩測し、これから地球の円周約4万キロをはじき出している。
 現代の測定と約1000分の1しか違わないというから驚き!。
 また、伊能家の資産を3億円から70億円程度まで増やしたビジネスマン
 だったことも注目に値する。

 そんなエピソードがふんだんに登場するが、面白いのは、時空を超えて、
 著者と忠孝が対談したりする空想的な展開だ。

 忠敬先生: 君は、小説のなかで何人もの女性を登場させるが
       一回もわしにいい思いをさせてくれなかったぞ。
       わしは、君の小説から降りたい。

 著者:   それは困ります。続編ではうんと気をきかせます。・・

 などといった会話だ。ひょっこりひょうたん島の作者らしくて楽しい。

 本書は、井上ひさしの「四千万歩の男(全五巻)」の導入的な本のようだ
 が、これだけでも非常に面白い。
 
 歴史を思いっきり堪能できる本だ。

 ====================================================================
 

   ★★★★☆+人生二山説の元祖

 
   ・伊能忠敬に興味ある方
   ・地図が大好きな方
   ・地球の大きさをはかってみたい方

Posted by webook at 2004年03月02日 23:56