したたかな愚直が地図を残した。
【四千万歩の男忠敬(ちゅうけい)の生き方】
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|著者:井上ひさし
|講談社|2003年 12月
|ISBN:4062739054|533円|278P
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伊能忠敬は、江戸時代に生きた下総の名家の旦那様。50歳で隠居後、7
2歳まで生きた。そして、忠敬のすごさは、隠居後の活躍である。今で言
うなら定年後に、歴史的な大事業を成し遂げるようなものだ。52歳でケ
ンタッキーを始めたおじさんみたいなもんだ。(ちょっと違うか)
著者の井上ひさし氏も「一身にして二生を経る」というライフスタイルに
注目する。隠居後に星学暦学の勉強をはじめ、56歳から72歳までの1
7年間で三万五千キロ、約四千万歩を歩き日本地図を完成させたその愚直
な生き方は、高齢者社会に突入した現代に刺激を与えてくれる。
伊能忠敬は精密な日本地図を始めて作った人として有名だが、地球の円周
を実測・計算した人でもある。井戸1度の長さを28里二分(110.75Km)
として歩測し、これから地球の円周約4万キロをはじき出している。
現代の測定と約1000分の1しか違わないというから驚き!。
また、伊能家の資産を3億円から70億円程度まで増やしたビジネスマン
だったことも注目に値する。
そんなエピソードがふんだんに登場するが、面白いのは、時空を超えて、
著者と忠孝が対談したりする空想的な展開だ。
忠敬先生: 君は、小説のなかで何人もの女性を登場させるが
一回もわしにいい思いをさせてくれなかったぞ。
わしは、君の小説から降りたい。
著者: それは困ります。続編ではうんと気をきかせます。・・
などといった会話だ。ひょっこりひょうたん島の作者らしくて楽しい。
本書は、井上ひさしの「四千万歩の男(全五巻)」の導入的な本のようだ
が、これだけでも非常に面白い。
歴史を思いっきり堪能できる本だ。
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★★★★☆+人生二山説の元祖
・伊能忠敬に興味ある方
・地図が大好きな方
・地球の大きさをはかってみたい方