本書は、ふとしたきっかけで41歳からピアノを練習しはじめたおじさん
の悲しくも心温まる物語である。
どこかの雑誌で、「かなしくも心温まる」「おじさんの」ジャズ・ピアノ体
験記・・と紹介された記事を読んだ。その記事は僕の脳ミソのヒダにしっか
りとからまっていた。だから成田空港の本屋でこの本を見つけたときは即購
入。飛行機の中で読んだ。
かくいう僕も、実はピアノを弾いてみたいなぁ・・・とはかない思いをず
っとひきずってきたおじさんなのである。
この本風にいえば・・・
きっかけは、中学の音楽のときだった。僕のつくった創作曲(おなか
がすいた)をきれいな音楽の先生(須田先生:わぁーまだ覚えてる)
が弾いてくれた時だった。あぁー僕もあんなふうに・・と思ったのは。
やがて時が流れ、社会人になってから、一念発起して(邪念勃起して
といったほうがいいかも。本書の著者と同じようにヨコシマな気持ち
が確かにあった;汗)、ピアノを習いにいったことがある。1ヶ月で
やめた。なんとなくイメージしていた、手取り足取り、心うきうき(
なんと、いかがわしい!)とはいかなかったからである。
「もしもピアノが弾けたなら」を歌った西田敏行が、その10年後、TV
ドラマで「101回目のプロポーズ」に出たころ、世の中のおじさん達は
ピアノ熱に吹かれた気配があるとは著者の分析。あたってるかもね。
著者がジャズ・ピアノを練習するようになったきっかけを告白する。それ
は、北新地のナイトクラブでの話。ピアノを弾く初老の老人(客)がホス
テスにえらくもてる姿をみて、激しく嫉妬したのがきっかけだという。
実に卑猥かつおじさんぽい。正直でいいじゃないか!
家族に疎まれながら、自己流で覚えたピアノを人前で披露できるようにな
った著者。その面白ろおかしく、はかなくもユーモラスな物語は、世のお
じさんたちのピアノが弾けたら・・という夢を再度かきたてるに違いない。
年をとって、もてない秘訣=昔の自慢話を吹聴すること
年をとって、もてる秘訣=ジャズ・ピアノが弾けること
さて、そこのおじさん。人生まだまだチャレンジの余地がありますぞ。
<オススメ度>
★★★★☆+よこしまでもいいじゃないか
<読んで欲しい方>
・ピアノを弾きたいと20年以上思ってきたおじさん
・ピアノがひけるおじさん
・定年後も、もてたいなんて思ってるおじさん