【空中ブランコ】
--------------------------------------------
|著者:奥田英朗
|文藝春秋|2004年 04月
|ISBN:4163228705|1,238円 |265P
--------------------------------------------
今日は、直木賞受賞作のご紹介。受賞作のほか4作品が収められている。
いずれも、中年太りした精神科医、伊良部一郎が、ちょっとトンデモな方
法で人の悩みを解消するお話。
著者は岐阜県出身の方だ。
1面で受賞を知らせる記事を掲載した新聞(岐阜新聞)に、自分の本(早
朝起業)のことも書いてあった(8面)ので、なんだかうれしかった。
直木賞作品をはじめて読んだのは大学生のころ。渡辺淳一の「光と影」だ
った。読んだ理由は、短そうだったから(笑)。でもめちゃ面白かった!
直木賞は基本的に中・短編が多い。だから読みやすいし、ワクワクどきど
きする作品が多いのがいい。
http://homepage1.nifty.com/naokiaward/index.htm
今回の受賞作「空中ブランコ」も56ページのボリュームだ。
しかし、その中に展開される心理的な葛藤は、読者をすぐに小説の中にひ
きずりこんでしまう。
内容は、サーカスの花形、空中ブランコの名手(山下公平)がスランプに
陥る話。人は自分の本当の姿や状況はなかなか認識できないものだ。つい
人のせいにしたくなる。山下も、空中ブランコでのミスを、相手(キャッ
チャー)のせいにしていた。
周りの団員との心理的な軋轢、自身の葛藤、焦り・・・そういうものが、
じわじわと押し寄せる。読者は、すんごく圧迫される感じを持つ。
一方で、あけっぴろげでどこかユーモラスな精神科医伊良部の行動は、物
語に不思議な色合いを織り込んでいく。
結末は読んでのお楽しみだが、どの作品も爽やかな気分にさせてくれると
ころがいい。
受賞作のほか、次の4作品が収録されている。
とがったもの恐怖症のやくざの話(ハリネズミ)、ルーキー登場で急に野
球がヘタくそになるプロ野球選手の話(ホットコーナー)、心因性嘔吐症
に悩む女流作家の話(女流作家)、カツラをはがしたい衝動に悩む大学講
師(義父のズラ)。どれも、最後はスッキリ爽やか。
夏休みの午後、読んで欲しい。
読み終わったあと、遠い空に浮かぶ入道雲がひとの顔に見えるかも・・。
--------------------------------------------------------------------
<オススメ度>
★★★★★+注射しとく!?
<読んで欲しい方>
・すっきりしたい方
・軽い悩みがある方
・小説でも読むかって方