【内部告発者】
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|著者:滝沢隆一郎
|ダイヤモンド社|2004年 07月
|ISBN:4478930538|本体価格:1,400円 |252P
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ダイヤモンド社は、ダイヤモンド経済小説大賞を創設した。創業90周年
記念事業だという。(90年!、すごい)
→ http://www.diamond.co.jp/novel/
で、その第一回受賞作が今日の本。著者はまだ38歳の弁護士さん。
内容は、中堅損保会社、渋谷火災(通称シブカジ)を舞台にした内部告発
の物語である。
ある日、経済誌フロンティアに渋谷火災の不正融資の暴露記事が掲載され
る。しかもそれを強烈に証拠づける最高経営会議の議事録コピーの写真ま
で掲載される。社内中枢部の人間からの告発であることは明らかだった。
法王として畏れられている渋谷火災の会長藤田想太郎は、前副社長の仲田
希一に間違いないと確信し、損害賠償請求を起こす。
身に覚えのない訴訟に動転する仲田は、若い弁護士羽根田潤にたよるほか
なかった・・・・。
40年勤めた会社から訴訟を受けるという屈辱に加え、家族の中にも様々
な軋轢が生まれる。突如わいた苦境にもがく仲田の苦悩がひしひしと伝わ
る。結末は読んでのお楽しみ!
いくつも張り巡らされた伏線が解かれるとき、まっとうに生きることの大
切さが浮き彫りになる。
総会屋との癒着、不正を隠してブランドを貶めてしまった最近の事件(自
動車や乳製品など)、政治家と企業のもたれあいなどを登場人物に語らせ
ている。それらはフィクションをリアルの世界につなぐ触媒として機能し
ている。「ははーん、あの人のことだな・・・」みたいな想像を働かせな
がら読むと楽しい。
著者は、本職が弁護士さんである。裁判の尋問シーンや法律上の仕組みな
どがとてもリアルに描きだされている。損保業界の内情や上にばかり気を
使う組織力学の描写も面白い。心理描写も巧みだ。
内部告発という非常手段の前に、正常化される組織でありたい。
あなたの会社・・・大丈夫?
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<オススメ度>
★★★★★+ホイッスルブローワー
<読んで欲しい方>
・ビジネス小説がお好きな方
・裁判に関心がある方
・損保業界に興味ある方