似顔絵は、そっくり絵ではない!
【似顔絵】
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|著者:山藤章二
|岩波書店|2000年 05月
|ISBN:4004306752|940円 |198P
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週間朝日の似顔絵塾やブラックアングルがお好きな方は、この本に深い共
感を覚えるにちがいない。なにしろ山藤章二さんの現代似顔絵論が展開さ
れているんだから。
「似顔絵は、<そっくり絵>ではなく、自分の手元に引き寄せて手玉にと
る」ことであるという。
似顔絵は、似ているだけでは面白くない。そこになにやらいかがわしきも
の、触れてほしくないもの、出来れば隠しておきたいことを表出させる、
ジャーナリズム的批評精神が必要だという。しかし、それだけでは物足り
ない。そこに「笑い」という要素を付け足しているところが、山藤流の人
気の秘密だ。大人の笑いのエスプリがなんとも心地いい。
著者はサラリーマン川柳の選者もやっている。川柳と似顔絵は共通点があ
る。シニカルな笑い。似顔絵も川柳も作者の主張があるところがいい。
著者は、似顔絵の本質をベン図(円の重なり)でみごとに解説している。
本物と似顔絵を円で描くとすれば、その重なりが大きいほど写術的、写真
的になる。しかし、それではつまらない。本物(モデル)のもつ多面性の
どこと重なるかが問題だという。本質的なところをほんの少しでも押えて
いれば、見る人は、ウム!とひざを打つ。
しかし、その微妙なところを感じてくれるお客さんがいないと、作者のひ
とりよがりになってしまう・・・。
そう、似顔絵、風刺、川柳などは、それを感じれくれる時代が重要なのだ。
そういう時代がいつはじまったか・・・。TV時代においては、その転換
機はタモリだという。それまでは本物とどれだけ同質化したものが出せる
かがカギであったが、タモリが寺山修二のモノマネをやったあたりから変
わってきたという。寺山修二の声の質をまねるのではなく、思考回路を真
似たところがポイントだ。
そういうものを受け入れる雰囲気や時代がそこにあったわけである。
山藤章二とタモリ。時代を読み取りそれを芸(術)にした異能の人である。
100年後、社会の教科書に載るかもしれない。
ともあれ、楽しみながら考えることができる本である。
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<オススメ度>
★★★★★+戯れ絵師
<読んで欲しい方>
・似顔絵が好きな方
・ものまねが得意な方
・時代と社会の風を感じたい方