立ち止まって見つめることもたまにはいい。
ゆいごん、と聞けば否応なしに死を感じさせる。だからどうしても暗く重いイメージになる。しかし、本書での「ゆいごん」は、自分の生に向き合うためのものだ。日常のごくあたり前のことも、立ち止まってよく見れば「かけがえのないスバラシイもの」だったりする。
そいういう時間をもつための「ゆいごん練習」なのだ。
著者は、息子さんが20の誕生日の日に書き残したメモを大事にとっているという。それは「バイトに行ってきます。10:30ごろ帰宅予定」というただそれだけのメモだ。あわただしい中で、息子の誕生日に何かを残したいと思った母親(著者)は、そのメモに「琢磨、20歳の誕生日に。○年○月○日」と記してメモリファイルに残したのだった。
やがて私(著者)が死んで息子が50才、60才になった時、そのメモを見ることがあれば、絶対に会えるはずのない20歳のときの自分に会える・・・というわけだ。なんと素敵なプレゼントだろう!。
母親の深い愛情を感じで涙がこぼれるに違いない。
死の間際に備えるのではなく、生きている「今」を素敵なものにするために、この本はある。
夫へ妻へ、子供へ・・・思いを伝えるために、ゆいごん練習というのもなかなかいいものである。
さらりと軽く、そして爽やかに・・・「ゆいごん」とはそうありたい。
ネット時代、あらゆることがつながりやすくなってきた。そんな時代にもかかわらずレトロな方法で、しかも時を経て、「自分の気持ち」が伝わるなんて、ちょっと楽しいじゃないだろうか。
★★★★☆+時を経て伝わるもの
・あの人にこの気持ちを伝えたいって方
・感謝の気持ちをどこかに残したい方
・自分史を書きたい方