転職・就職は企業にお願いするもんじゃない、売り込むもんだ。
産業のサービス化が進む中、企業の悩みは人件費。スタートアップ企業であればいろんなやり方があるが、すでに長い歴史のある企業では組合問題や労務問題などで一筋縄はいかないのが普通。
一方、個人の立場からは、いきなりルールが変えられてリストラだ片道切符の出向だと大波小波の人生の方も多い。特に中高年の場合は、再就職や転職といってもなかなか思うようにいかないのが現実のようだ。
企業の立場、個人の立場、双方から中高年の転職というのは悩みの種なのだ。そんな中、本書の存在は、実に朗報である。
自分を見つめなおし、「何が出来ます」ベースではなく、「何がやりたいんです」ベースのポジティブな転職の仕方を実例を踏まえて紹介している。著者は主に中高年の転職者を中心に、転職支援の活動を行なっている。そして多くの成功事例を重ねてきている。本書はそうした実績がベースになっており説得力がある。
「転職者の潜在的能力を引き出すコーチング」
+「提案営業と面接の技などのガイド」 = ビジョンとアクション
というのが著者の転職支援プログラムである。
自己PR文の作成、面接ではその企業が欲していることを聞き出すことに徹し後で企画書を送る、求人情報の条件は無視してかかる条件破壊の一手・・・など目からウロコの転職術がある。これらのことはなにも中高年に限ることはない。若い人も主婦もみんな当てはまる。
「35歳以下、SE経験者求む」みたいな条件があって、仮に自分はもう55才だとしよう。諦めることはない。「私は55歳だが、組織の、マネジメントについては自信がある。SEのグループを束ねてプロジェクト管理する人が必要ではありませんか?私は適任です」とやればいいのだ。
実際、企業の台所事情は表には見えない。「実は、そういう人も欲しかったんです」みたいなことはあるという。与えられた条件(土俵)に素直に従わなくても、自分のルールを考えてしまえばいいのだ。これを条件破壊と著者は言う。
(僕も実は大学の客員職を別の意味での条件破壊でゲットした)
この時代、個人が企業が何をすべきか・・・おおいなヒントをくれる本である。人件費や固定費削減に頭を悩ましている人事部の人にとっても閃くものがあるに違いない。また、ハローワークでのむなしい対応に打ちひしがれている方がいたら、一筋の光明が本書に見つかるだろう。
自己PR文。これはいいね。毎年秋口になると人事考課の用紙がまわってくる企業も多いはず。
その中に「あなたが転職、転勤するとして、自分をどうPRしますか?A4用紙1枚に書いてください。図解も歓迎です」みたいなのをやってはどうだろう。自分を見つめなおすとてもいい機会だ。中高年に限らず、若手の人もいい。上司はその紙をもとに、その人のいいところを引出し、輝かせるようにすればいい。来月から仕事がない・・という真剣さで取り組みたい。できたら、仲間で発表しあうのもいい。そして、さらにそこにプラス要素をみんなで出し合うのもいいかも。
今、企業が必要としているのは、「その企業で必要な人」ではなく「よその企業でも欲しいといわれるような人」にシフトしてきたから・・・・。
そうそう、人事部長さんにも提案にいこう。人件費削減はどうしようもない・・・・といって思考停止に陥っているなら、ちょっとしたヒントがこの本から見つかるから。
★★★★★+自己PR
・退職勧告をする(される)ことになった方
・将来、お先が暗そうな方
・転職に興味をもった方