「まーっと普通に言え。たぁーけ」(名古屋弁)
冒頭のセリフは、著者が名古屋の老人のつもりで投げかける毒づきの言葉である。何に対して? たとえばこんな文章に対してである:
「国語を適切に表現し正確に理解する能力を育成し、伝えあう力を高める
とともに、思考力や想像力および言語感覚を養い、国語に対する関心を
深め国語を尊敬する態度を育てる」 (学習指導要領)
「読者の自我は、独立した実体ではなく、その習慣的な概念群、観念体系
によって構成され、かつ制限されている社会的構造物であり、その枠組
の中で、あるいはその枠組みによってテクストの文学性を判断するので
ある。」(ある文学者のお説)
いったい何がいいたいの?という文章は時々お目にかかる。上記は、お役所的に「ちゃんと言ったぞ」という申し伝えておくための文章だったり、利口そうにみせたいがために専門訛りを駆使した学者さんのことばだったりする。
これらは本書の第7講に登場する「近寄ってはいけない文章」の例だ。
ビジネスパーソンの多くは、日々いろんな文章を書いている。企画書、議事録報告書、メルマガの文章、日記・・・などなど。本書はそういう一般人のための文章講座である。清水さんらしくちょっと斜にかまえた言い回しがとても楽しい。
依頼文を書くなら、「なぜ、あなたに依頼するのかを丁寧に伝えることである」とか、読んで面白かったものを真似てかくのは上達のコツだとか、原稿用紙100枚を一度書いてみるとめちゃ自信ができるとか・・・なーるほどぉと思える文章の指南がある。
清水さんはパスティーユ作家と呼ばれたことがある。文章の模倣によってユーモアや皮肉の味付けをする作家ということらしい。TVでいえば、タモリとかコロッケみたいな感じかな・・・。
司馬遼太郎や、丸谷才一、漱石などをもじって報告書を書いてみるのも楽しい。プロジェクトXふうの営業報告なんて面白い。(著者はそれはよせ!と言っているのだが・・・)
たとえば:
「高橋は走った。故障箇所を一刻も早く見つけなければならなかった。
それが見つかった。だが、オート・ミクロクレーンは動かなかった。
そこからが戦いだった。」
地上の星のメロディが浮かびそうな文章で楽しい。こういう報告書を書くと出世コースからはずされる・・・とは清水さんの言。でもやってみたいね。笑
★★★★☆+わからんでかんわ
・文章を楽しく書きたい方
・会社の文書をわかりやすくしたい方
・エッセイに興味をもった方