2004年11月21日

芥火 ~ 乙川優三郎

やはり、小説はこうでなくっちゃ・・・


書籍情報

  

芥火
芥火
posted with amazlet at 04.11.21
乙川 優三郎
講談社 (2004/09/22)
売り上げランキング: 29,650
通常24時間以内に発送
おすすめ度の平均: 4
4 端正な作品集

本のひらめき

芥川賞と直木賞。僕はやっぱり直木賞のほうがズンと好きである。この前の芥川作品(パーク・ライフ)とくらべたら、この作品のほうがとってもみずみずしい色合いが感じられる。

乙川さんの作品は数多く読んできたが、この作品集もなかなか心引かれる物語が収録されている。

とくに「夜の小紋」という作品がよかった。油問屋の次男坊として生まれた由蔵が主人公。兄の信兵衛が急死したため一家の主にと呼び戻されるという物語。しかし、由蔵には人生をかけたい夢(素晴しい小紋=染物を作ること)と、その夢をともに理解できる好いた人がいたのだった。夢と女をともに失い、10年の年月が過ぎたあるとき、不思議な縁はふたたび由蔵を小紋と分かれた女に引き寄せることに・・・。

そのほか「芥火」「虚舟」「柴の家」「妖花」が収められている。
みごとに描かれた心の機微は、読んでいると自然に感情移入してしまう。

静かな感動を味わえる乙川ワールドに浸るのも休日の楽しみの一つだね。人生、渋めに生きてこられた方にお薦め。


僕の思いつき

小説を書くときは構想が決め手のような気がする。登場人物とその特徴、そして彼らが織り成す出来事の構造が、出来上がりの物語の面白さを決める。構想力というやつだね。そして、微妙な心理描写の技術があれば、あなたも小説家になれる。(かも)

一度でいいから、乙川さんのような小説を書いてみたい・・・なんて思う方もきっといることだろう。
そう思えば、真剣に思えば・・・きっとそれも夢ではないような気がする。10年の年月は、人を変え、顔のしわを増やすが、意外なことに「何も変らなかったな・・」と振り返って思う人も多い。

10年もあればものすごいことができる。そこに強い思いがあるなら。この10年がどうだったか、振り返ってみるのもいいね。そして、この先10年をどうするか、どんな夢を追いかけてみるか。今、その岐路に立っているのかもしれない。僕も、そしてあなたも。


オススメ度

★★★★★+歳月

読んで欲しい方

・乙川優三郎の作品が好きな方
・時の流れの速さに!な方
・人生いつも青春だという方

Posted by webook at 2004年11月21日 12:37 | TrackBack