人はお金だけによって動くものではない。
年功序列、終身雇用・・といった言葉は、もはや過去の遺物・・・なんて思ってる方も多いことだろう。「成果」や「実績」こそがホンモノだという成果主義が広く採用されてきた。
年が経てば賃金もランクも自動的に上がる年功序列型の賃金体系は、コスト効率も悪くモチベーションも上がらない・・・というのが成果主義を導入する会社の仮説である。
しかし、鳴り物入りで導入した成果主義がうまく機能していない企業も多く、元富士通の城繁幸さんが書いた『内側から見た富士通「成果主義」の崩壊』、や溝上憲文さんの『隣りの成果主義』などで成果主義の運用の難しさが解説されている。
本書は日本型の年功制の復活を勧める本である。なかなか理にかなったロジック展開が痛快である。
年功序例といっても年代が上がるにしたがって全ての人が給与やランクが上がっていたわけでもなく、それなりに評価がされていたという。エース級の人は社内評価も一致していただし、橋にも棒にもかからない人も明白だった。そして、グレーゾーンの人はそもそも細かく差をつける必要もないという。確かに。年功だから差がつかない・・というのは誤解だったのだ。
著者は、従来の年功制でも成果主義よりはましだと思うが、改善の余地もあるとしている。
本書の一番のポイントは「人はお金だけで動くものではない」という点だ。成果主義のロジックのポイントは成果の評価結果をすべてお金で決着させようとしている(ように見える)ところだ。あるいは多くの人がそう誤解してしまっているからだ。
人のモチベーションは、『お金』ではなく『次の仕事』であるという。確かにあなたの前期の成績はAAだといわれてもその瞬間ちょっといい気分になるだけのような気もする。
本書には、いろいろと本質を考えるヒントが隠されている。
人は何で動くか。どんなときモチベーションが上がるか。そんなことを考えてみると面白い。
褒められたとき、認められたとき、聞いてもらったとき、やいり甲斐のある仕事をもらえたとき、お客さんに感謝されたとき、成長を実感できるとき・・・
部下を持つ人はいろいろ考えてみよう。
★★★★★+虚妄の妄想
・成果主義を導入中の方
・年功序列制度の会社にいる方
・マネジャーになった方