対価の配分をロジカルに考える
タイトルから想像すると人事部の人むけに賃金体系を解説する本かな・・?と思ってしまったが、実はもっと面白く奥深い話が展開する。
本書は、中村修二氏(元日亜化学、現サンタバーバラ大学教授)の青色発行ダイオードに対価をどうみるべきか・・・というのがテーマである。青い炉発行ダイオードは、200億円支払い命令の判決のあと、上告の末、先日、2億円の和解決着をみた。中村氏は「完全に負けた」とインタビューで憤
慨してみせた。
中村氏の発明に対する対価はどう考えればいいのか・・・さまざまな報道や意見などを引用しながら面白く展開する。
中村氏勝訴、200億円の記事のあと、産業界や多くのマスコミは批判記事を書いたという。その状況にたいし判決を支持したのは、著者ともう一人だけだったという。
議論には議論をもって対抗すべきなのに、利害調整だけで運営される日本
の風土、そんな利害調整人だけが出生する日本の風土を鋭く批判した・・
という。このあたりの表現には、発明の対価に対する日本での議論の仕方からビジネス一般にまで敷衍して著者の憤りが現れている。断片的な情報だけで中村氏が起こした発明論争をみてはいけないようだ。本書は、そういう意味で多くの論点を整理している。
指揮者小澤征爾のギャラは700万円くらいだそうな。そして一般の指揮者は50万円程度。この差は妥当なのか・・・そんな検証もある。
僕の一番興味を引いたのは、実は本文である青色ダイオードの発明ではなく、おまけにあった「バカの壁」の編集者に対する報酬の話。定価680円のこの本は370万部も売れた。この本は、養老孟司氏と親交のある編集者の企画だったという。口述筆記のこの本は、企画および編集というかなり重要な部分を編集者の仕事に負っている。著者は、この編集者がもらうべき対価として、1億5千万円をはじき出している。ここも面白い。
バーディーン、ブラッテン、ショックレー・・・この名前に見覚えのある人は工学部出の人だろう。トランジスタの発明といえば納得のはずだ。著者経歴をみるとなるほど工学部の教授。話の展開がなかなか理路整然としていて気持ちいい。
大成功したプロジェクトの利益にたいして、主に関わった人はどのくらい対価をもらうのがいいか、ロジカルに考えて計算してみるのも面白い。
★★★★★+対価
・会社に貢献する発明をした方
・ものの価値を考えるのがすきな方
・すごいの発明するぞって方