志!
本書を読むととても熱くなる。
なぜか。
ここに登場するロースクール一期生がみな、熱い「志」で動いているからだ。
よのなかの仕組みは、けっこうガッチリ決まっていて、ヘンだと思ってもなかなか変えられない・・・とあきらめていることが多い。病院しかり、裁判所しかり、国の政治しかり・・・。
裁判について言えば、最高裁まで3回の闘いをいどめば10年はかかるという「使えない裁判」が目の前に横たわる。これはおかしい!とだれもが思うことがようやく変わろうとしている。99年の司法制度改革審議会からスタートし、法科大学院制度などが整備された。2004年、68校の法科大学院ができた。
本書は、法科大学院のひとつ大宮フロンティア・ロースクールの一期生たちの熱い物語である。ここは、現役の弁護士が中心になってできたユニークな学校だ。
生徒は、カリスマ塾講師、現役のお医者さん、二児のお母さん、会社を辞めてきた人・・さまざまな人が集まる。
儲かりそうな弁護士になる・・・そんな浮かれた気持ちではない。みな、今の社会の基盤である法律をもっと利用者視点にたったよいものにするため、よのなかの不備を直したい・・・そんな「志」がある人ばかり。本書からは、その思いがひしひしと伝わる。
また、ふだん縁のない「裁判」という世界が、明治以来130年ものあいだ、旧態依然とした世界をひきづってきているという実態を垣間見ることもできる。
要は遅れているのである。
コラム:息をもつかせぬ裁判文 には、「必ずしも~でないとはいえないと断ずることは出来ない」といった3重否定の悪文や、原稿用紙1枚をこえる長~~い文章に句点(。)がひとつという驚愕の判決文などが紹介されている。
聞いているだけで意識朦朧、気分が悪くなろうというものだ。
思わず、応援したくなる熱い物語と、よのなかの変わるべき一面を知ることができるオススメの一冊。
ここに登場する人たちこそ、弁護士になって日本の司法を変える志の人になってほしいと思う。
僕は、仕事で弁護士さんと対峙したことがある。あるIT企業のおかかえ弁護士さんだった。デユーデリジェンス(企業価値評価)の場面で、僕が聞かれる側、彼が買収側の代理人の立場だった。若くて有能、かっこいいなと思った。
「私は会社の代表としてきています。私がここで判断します。」
と言い切ったその方は、某外資系大手IT企業の方だった。
弁護士は、六法全書などの法律知識でけではなく、各分野での専門知識が必要だ。医師に専門医(小児科とか外科とか)があるように、得意分野というもの
がある。
得意分野といえば、本書ではお医者さんが登場する。梅田さんだ。梅田さんは医療と大学院を掛け持ちでやっているタフな方だ。梅田さんのキャリア論がすばらしい。
キャリアには二つある。「地位」と「経験」である。地位は、なくなれば何も残らないが、経験は価値として残る、というものだ。医師としての経験は残り法律の専門家としての二つ目のキャリアが加われば、すばらしい。
キャリアをそういうふうに捕らえるのは新鮮だ。
さて、経験をキャリアとするためには、どうしたらいいか・・・
そう、・・・・あれだよね。笑
★★★★★+法律の顧客は誰か!?
・弁護士になりたい方
・法科大学院に興味ある方
・正義の味方が大好きという方