本地垂迹説(ほんじすいじゃくせつ)?
本書は、「プロになるならこれをやれ!」に続く第二弾。前作はプロのビジネスパーソンになるための心構えを説いていたが、本書は大局観の話。つまり、ものごとの捉え方の話である。
マクロ的経済視点では、日本経済がこのままいくと2010年にとんでもないことになる(人口減少、財政破綻からくるハイパーインフレなど)2010年問題について説く。
ミクロ経済的視点では、日本企業の強み弱みを分析。
最後に文明論的視点では、日本の社会思想的な考えについて考察がある。中空構造と本地垂迹説がとても面白い。
とても読み応えがある。この国の生業、社会の行く末などを考えるのに最適。
先日、金沢工業大学大学院の特別講師としてお迎えしたピーアークの大井さんがとても印象的なお話をされていた。バランススコカードがテーマだったが、その中で出てきたのが「本地垂迹説」のお話。とても興味深く印象的だった。(もちろん、本論のBSCのお話がとても有意義だったのは言うまでもない)
本地垂迹説とは、神様と仏様の融合の話である。本書の第3部、文明論的視点から日本のアイデンティティを考えるところで登場する。
それってなぁに?
あのね、日本に仏教が伝来したのは6世紀。その前は八百万の神様を信仰する社会だった。ところが仏教というきわめて文化度の高い宗教が伝来し、はたと困る。神道の国に仏の教えがきたからだ。
神様か仏様か。はてどちらを選ぶ?・・というのは西洋的思想。
日本人はとても柔軟な発想をあみだす。それが本地垂迹説だ。本地とは「本来の姿」、垂迹は「仮の姿として現れる」という意味。つまり、私たちの信仰してきた神様はさまざまな形をとって私たちの前に現れているが、本来は仏様が姿形を変えておられるものという考え方である。つまり、神様と仏様は同じものだという実に柔軟な(いいかげんな?)発想である。ふむふむ。
さらに、河合隼雄氏の「中空構造の精神構造へと続く。一神教のキリスト教は中心に絶対的な神の存在があるが、日本の場合はそこが中空だという。ただし空であっても無ではなくエネルギーが満ちているという。なにやら面白いことになってくる。
さらに企業のリーダーシップ、ゴーンの経営手法と話は発展する。このくだりは実に面白い。
歴史や文化と現代社会のビジネスをつなげるのは楽しい。
★★★★☆+中空構造
・プロをめざしている方
・経済に興味ある方
・日本大好きという方