素直な心には聞こえてくる・・・
中国ブームだが、正直なところ中国を巨大な市場と安い労働力というふうに捉えている人が多いのではないか・・・。しかし、かつて日本は中国に学び発展してきた。文字だって、都市づくりだって・・・。今、ビジネスの仕方を学ぶときかもしれない。
著者は、脱サラして起業した人である。大手企業を退職し起業をめざすが、何をどうしたらいいのかが見極められず、そのヒントを求めて中国へ留学。そこで出会った華僑の資産家、王さんにビジネスの真髄を教わる。
本書は、そんな著者の成長の記録だ。王さんという華僑にさまざまなレッスンを受ける様子が実にリアルに描かれている。まるで映画をみるように進む展開はとてもワクワクする。しかも、示唆に富んだヒントがいっぱいだ。ヒントというより人生の羅針盤といったほうがいいだろうか。
たとえば:
変化に気付いただけではビジネスにはならない。重要なのは「必要」と されるものが何か、に気付くことだ。
成功の度合いを稼いだお金で評価しないほうがいい。・・・
それは「信頼」だ。信頼してくれる人の人数は、君達がまじめに努力し
つづける限り確実に増える。
中華圏においては、どこの会社の人間かということよりも、どういう
人間なのかということのほうが大切だ。
相手に興味を持つことは最大の礼儀に値する
信頼は得るものではなく育て上げるものだ。
訪れたチャンスはためらわずにわしづかみにするんだ。
などなど、著者が門前の小僧よろしく、王さんから受けた薫陶はとても奥が深い。なんというか、しっくりとおなかに収まるころが心地よい。
本書の後半は帰国後の起業編だが、決して順調ではなく自転車操業が続く。しかし、そんな中で王さんから受けた教えが生きてくる。真剣、正直、信頼・・・そんなキーワードが小方さんの窮地を救う。
広告がうまくいかなかったとき、倒産寸前にまで追い込まれたとき・・・そこには意外な展開が待ち受けていた。それは幸運でもなんでもない。著者の真摯で誠実な仕事振りに感銘を受けた人が「日本の王さん」になってくれたのだ。
ビジネスや仕事に、こんなふうに立ち向かっていけたら素晴らしい!・・そんな感動を覚えながら読み終えることができる。
爽やかで感動的、そして奥が深い!
中国から帰国する直前、ある大きなパーティで、王さんが著者を紹介するシーンがある。
「彼は、私が知るかぎり、はじめて中国に学びにきた日本人です。」
日本は経済先進国だから中国にビジネスのやり方を教わるほどではない・・と無意識に思っている人が多い中、ガーンと頭を殴られた思いがする言葉だ。
世界にネットワークをもつ華僑の人たちがなぜ成功しているのか・・・本書を読むとその真の理由がわかるような気がする。
要は、信用と人のネットワーク。契約書ではない、人を信じられる胆力のようなものがもっとも大事なものなのだ。
「人と組むときは、十分に検討して相手を選べ。もし組むんだったら
徹底的に相手のことを信じろ」
という王さんの教えがある。「成功の秘訣は、お金を増やすことではなく、信頼してくれる人を増やすことだ」というのが王さんのイチバンの教えではない
だろうか。
さて、そんな相手は今の自分にとって誰だろう。
15分ほど時間をつくって静かに考えてみよう。
★★★★★+信頼が一番
・起業しようかと考えてる方
・あたらしいビジネスに興味ある方
・中国が大好きという方