知恵と心のつながりを求めて
医薬業界には、MR(医療情報担当者)という仕事がある。新薬などを医局の先生に紹介したりする技術営業みたいなものだ。ITの世界でいえば、SEと営業を足したような役割か。
本書は、日本ロシュ(後の中外製薬と合併)で著者が体験した「ナレッジ・マネジメント」の人間系部分を紹介した本である。
医療分野での話しながら、本質のところはどんな組織でも同じである。自社に照らし合わせながら読めるところがいい。
個人の知を組織知に変換する。変換した組織知を個人知としてまた活用する。
ナレジマネジメントを著者はこう表現している。いうのは簡単だが、最後は人と人がどう向き合うか、あるいは、問題や課題に向き合うかといういたって、どろくさいところにいきつく。本書は、まさにそういうところに光を当てる本だ。
著者は、有能なMEのスキルを広げるSST(スーパースキルトランスファー)というプロジェクトを推進する。社長の「生産性を2桁アップしてほしい。しかも持続する方法で」というぜいたくな要望から始まったという。
著者の社会人生活での体験が、ナレジマネジメントに昇華されていくプロセスを追体験できる。オススメ!!
(医療関係だけの書籍として扱うのはもったいない・・・)
著者の山本さんとは、実はずいぶん長いおつきあい。メルマガを始め、ブックチェイス(PHP)さんで書評記事を載せていただいていた頃、その存在を知った。しかし、互いにあったことはなく数年の時がすぎた。
つい先日、医療関係の重鎮、山田隆司さんという方を介して、ついに邂逅。長年逢えなかった恋人にあったような感じがした。
人は人生で会うべき人とはどこかでつながっていて、遅からず早からず、必ず逢える日がくる。(ただし、心構えができていれば・・・という条件があるが)そんなことを思い起こした。
山本さんも、ブックチェイスのころからずいぶんと環境がかわり、日本ロシュから独立して(株)コラボプランの代表に就かれている。
山本さんが50歳のとき、知的な日常をつくるべく一年発起。朝、早起きをして読書を始められた・・・というお話は、自分のことのように共感できた。
本書の最後のところに書かれている。多いに刺激を受けたいところだ。
一日に最低でも1時間、自分を高める時間を持つ工夫をしたい。そして、それを持続するために、楽しみながら集中できる「研究」(テーマややりたいこと)をみつたい。
★★★★★+名人芸の移植
・KMの達人になりたいと考えてる方
・ナレッジマネジメントに興味ある方
・野中郁次郎さんの本を読んだ方