歴史から考察する
この本は、戦略の本質を過去の戦史から解き明かし、同時にリーダーシップの本質にも迫ろうという学術的色合いのある本である。
中野郁次郎氏ほか防衛大の教授らが執筆している。完成までに20年を要したという(!?)。
毛沢東の反「包囲討伐」戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争などが題材となり、戦略的見地から分析がなされている。戦争や歴史に興味がないとあまり面白くない(と思う)。
終章にある<戦略の本質とは何か>に面白い考察がある。
戦略論というのは、本質論と原則論に傾斜しながら発展してきたという。
本質論というのは、哲学的、解釈的アプローチ。
原則論というのは、分析的、科学的アプローチ。
それぞれ左脳型、右脳型とでも言えるだろうか・・・。
きのう田坂さんの講演で聞いたヘーゲルの弁証法も登場する。
戦略は絶えず「正(テーゼ)」と「反(アンチテーゼ」と
「合(ジンテーゼ)」のプロセスで発展生成してきている。
ベトナム戦争ではゲリラ戦が米軍の正規軍を悩ませた。ゲリラ戦の本質は、
けっして負けないが、勝つこともないという矛盾にある。正規戦とゲリラ
戦の二項対立、正と反を止揚する(アウフヘーベン)「戦略的に組織化さ
れたゲリラ戦」が「合」である。
という。この分厚い本で気になった表現は、きのうの講演のあとだから理解で
きたような気がする。やや学術的な硬さが一般うけしない原因かも。
どんな戦争でも共通の心理があるように思う。戦うほうは、どちらも「本気」でやるしかない・・・というところ。
だから、戦争では、戦略も、組織も、教育も「本気」モードがある。
生死は関係ないビジネスの世界でも「本気」をどれだけ出せるか・・・それがビジネスの成否を分けるような気がする。
本気。これだねぇ。
★★★+逆転
・戦略を考えたい方
・戦史に興味ある方
・戦い方こだわりのある方