おいどんはシャイでごわす
西郷隆盛は、非業の死を遂げた人だが、その人徳から好感をもって語られることが多い。上野の動物園に犬をつれた銅像がある。見るたびに、はて、西郷さんはどんな人でごわしたか・・・ちょっと知りたいと思っていた。
そこで、この本、「西郷南洲翁遺訓」。しかも話し言葉で読めるというから素晴らしい。
「西郷南洲翁遺訓」というのは、本編41項目と追加分2項目があり、リーダー論、政治論、経済論など様々なことが語られている。語られているというのは、まさに言葉とおり西郷さんが語った内容を、庄内藩士(山形県)がまとめ
たものである。
鹿児島(薩摩)の西郷ドンの話を、なぜ、山形県(庄内)の人が?・・と不思議に感じる。これには、あるワケがある。
幕末に薩摩藩と戦火を交えた庄内藩は、負けてしまう。しかし、勝者の薩摩藩(西郷)は、庄内藩の藩主と一部藩士の謹慎を命じただけに留めたという。
理由は、戦いが終わった今、なおも敗者を痛めつけるのは人の道に反するというもの。西郷さんの慈悲の計らいだった。全員切腹を覚悟していた庄内藩の武士たちは、拍子抜けすると同時に、その寛大な西郷さんに深い感銘を受ける。
そして、維新後、旧庄内藩の人たちは西郷を心から慕い、日本列島を縦断して鹿児島留学をつづけ、西郷の教えをうけたという。それをまとめたのが「西郷南洲翁遺訓」である。おぉー。
学問の意義、才覚と徳、地位の無意味さ・・・など深い思索が吐露されたものだ。
味わい深いものが多い。
一番見つけたかったのは「始末に困る人」という講話。30番目に出て来た。
命もいらぬ、名も要らぬ、官位も金も要らぬという人は、始末に困る
ものです。しかし、この始末に困る人でなければ、艱難辛苦をともに
して、国家の大事業を成し遂げられないのです。
ほんとに始末に困る人も困るけど、大事を成し遂げる困る人は、すこしはいたほうがいいね。少しでもいいから・・・
ちなみに、西郷さんは意外にシャイだったらしい。
★★★★+徳と才覚でごわす
・人徳のあるひとになりたいと考えてる方
・歴史に興味ある方
・時代を動かしてみたい方