すぐそこにあるドラマ・・
本書は、著者が2004年にインタビューした市井の人、5人の生き方である。
有名な人、著名な人、本を書いた人、成功者と呼ばれる人だけが、すばらしいわけではない。すぐそばにいる名もない人も、すばらしい人生を生きている。
自分のまわりにいる「名もなき人」から、実は私たちは多くのことを学びとり、成長している。そして、誰もがすばらしい人生を送る価値があり、存在自体がすばらしいことに気がつく。
本書は、5人の方の生き方をすばらしい文章で浮かび上がらせてくれている。名もなき人が、なんてすばらしく素敵な生き方をしているのかを感じ・・・僕もがんばろうかな・・みたいな気持ちにさせてくれる。
露木数男さんの本で知ったのだが、レイチェル・カーソンの「知ることは感じることの半分も重要ではない」という言葉を思い出した。本書は、読んで名もなき人の生き方を知る本ではなく、感じる本だと思う。
スマイル・インターナショナル・プリスクールを創設した藪住春枝さんをはじめ、中島さん(700円の力)、加藤さん(その人のために)、山川さん(流れながれて)、杉浦さん(節)の5人が登場する。
名もなき人の素晴らしい生き方を、歯切れのよい文章にまとめる著者の筆力がるばらしい。(轡田隆志さんもきっと太鼓判を押すと思う。僕にはマネできない)
そして、その筆力を支える暖かくやさしいまなざしが、あちこちに感じられるのが素晴らしい。
藪住さんの「私は人生“運と笑顔と挨拶”で生きてきたんですね。」という言葉がとても印象的だ。
中島さんの物語では、「弱い紐帯の強み(The strength of Weak Ties)」という概念が心に残った。
コーチの加藤さんの物語では、「その人のためになりたいという真剣な思いがなければいけないんです」という覚悟が、僕の背筋を凛とさせてくれた。
杉浦さんの物語に登場した詩が、深い余韻を残した。
孤独の中にこそ価値がある答えがある。
なぜなら、孤独の中で手にした答えは、
自分の力で探し出したものだからだ。
なぜなら、その回答はその人が導き出した
世界で唯一のものだから。
誰しも“名もなき人”のまま生涯を終えるのかもしれない。しかし、それを残念に思う必要はない。なぜなら、どんな人生にも意味があるはずだから。
そして、宇宙や人が進化してきた先端の価値ある存在なのだから。
私の物語。いま、ここで静かに振り返るとどんなことがあるだろう・・・。
年末年始のあわただしさの中で、流されず、ふと立ち止まって考えてみるのもいいね。
私の生きるかたち・・・は何か。何のために生きるのか。誰のために働くのか。
また、新しい物語を紡ぐ時間が365日も与えられるシアワセをかみしめて、新年のスタート地点に立ちたい。
★★★★★+日常にあるドラマ
・人生の達人になりたいと考えてる方
・ドラマのような物語に興味ある方
・生き方にこだわりのある方