2007年問題という誤解!
シニア・ビジネスの第一人者。本書の著者、村田さんはそんな方である。
前作「シニアビジネス」では「団塊世代というマス・マーケットは存在しない」というちょっと衝撃的なプロローグから、シニアビジネスの新しい視点を紹介してくださった。
そして、団塊の世代がリタイアしはじめる2007年に近づいてきた今、またあらたな視点と考察に基づいて、ビジネス現場で直面する7つの壁について語り起こされた本である。
シニアビジネスで、どうやって儲けるか・・・などといった低レベルの内容では決してない。高齢化社会の先端を走る日本が、いかに生きるべきか、いかに企業やビジネス世界はあるべきか・・・といった深い思想がある。
最後の「シニアビジネスで世界のリーダーになれる日本」のところでは、村田さんの思想に触れて思わず涙ぐんでしまった。私達が、シニアビジネスという分野で何を行い、何を残すべきか。
内村鑑三の言葉を引用し、「私達は、未来にむかって礎となる覚悟をもち、これからの団塊・シニアビジネスに立ち向かうべき」・・というところに、とても深い共感を覚えた。
団塊市場というと、おおきな塊の、ある程度均質な、類似の行動パターンの市場のような錯覚をする。しかし、そういう「ひとくくり」の見方はは間違いだと指摘する。団塊市場はむしろ、「多様なミクロ市場の集合体」だという。つまり、均質な塊どころではなく、おおいに多様性に富んでいるのだ。
この固定観念をまず取り払う必要がある。
こうした勘違いがあることから、シニアビジネスではいくつかの壁にぶつかることになる。本書では、「市場調査の壁」「顧客開拓の壁」「商品開発の壁」など7つの壁について、分析し、ユニークな洞察と事例が紹介されている。
たとえば、「金銭報酬」より「心理的報酬」が重要になり、顧客は消費者というだけでなく語り部にもなる・・とか、スタバに代表されるような「商品体験」が重要になるとか、商品の「使い手」から「担い手」に顧客は変容するとか非常に説得力のある話が展開されている。
(折り目と赤線だらけになってしまった!)
シニアビジネスというカテゴリーにとどまらず、これからの企業のあり方は何か・・を考えさせられる深い洞察が心地よい。
超~お勧め!(ジェイカレッジに絶対来ていただくことにしましょう!)
団塊の世代、2007年問題、シニアマーケット・・・さまざまな呼び方が、ビジネス書やマスコミでなされている。
しかし、それらも深く考えてみると、本質を見誤ることになる。
例えば、2007年問題。この年から大量にサラリーマンが退職して大変だ、というのが問題の捉え方。
しかし・・・と著者は問い掛ける。
団塊の世代といっても半分は女性。(2007年問題という言い方がいかに男性の視点に偏っているか!)
また、雇用延長制度が成立した(2004年)ということは、60歳で定年にならないといこともある。一方、逆に早期退職の増加もある。
ということは、2007年問題は、2005年問題でもあり、2010年問題でもあるという。なるほど!
マスコミ・ステレオタイプな思い込みは、ほかにもあるのではないだろうか。
よのなかのことを、自分の頭で、冷静に深く考えてみることも大事だねぇ。
★★★★★+塊じゃない
・シニアビジネスの達人になりたいと考えてる方
・団塊の世代に興味ある方
・ジェントロジーを知りたい方