歴史を今風に学ぶ
堺屋太一さんの歴史分析はいつも面白い。現代にワープして、たとえるから、とても身近に感じて理解できる。たとえば、日本型プロジェクトの創造をしたという石田三成の項目では、徳川家康副社長に対抗して、創業社長秀吉の親友であった前田利家専務しかいない・・・といった表現が登場する。なんだかリアルにイメージできるのがいい。
12人の登場人物のうち、一番バッターは、聖徳太子。
なにを歴史に残したか・・・
それは「ええとこどり」の気風だという。
聖徳太子は、習合思想を発案した張本人だというのだ。新しい文化として伝来した仏教に対し、当時の日本は、「それまでの神道を捨て、仏教に帰依すべきか、はたまた仏教を排斥すべきか」・・・・当時の新しい文化と先祖伝来の信仰との間で揺れ動いていたという。そこに聖徳太子の教え「神道と仏教は両立する、さらに儒教も加えて3つが並存する」という思想が示され、人々は安心と心のよりどころを得たというのだ。
西欧の二者択一、勝ちか負けかの二元論ではなく、この柔軟さ(というかええかげんさ)が素晴しい。そして、それは今日まで続く。AかBかではなく、AでもBでもない状態もありうるという、謙虚な姿勢でもあるのだ。(西洋思想もだんだんこの東洋思想に近づきつつあるらしい)
二番手は光源氏。あれ、架空の人物じゃん・・?というのも無理はない。紫式部の描いた源氏物語の主人公だ。なのに、なぜ日本を創った12人の一人か?その意図はこういうことらしい。
意思決定をしない高貴にして高位な人、いわば無能だが上品な人の伝統
は、平安貴族、それも光源氏が生きた十世紀に始まった。
ということだ。確かに今でもそういう人は結構いたりする・・・オヨヨ。
その他、前例のないけったいな政権(つまり、律令制度を温存しつつ武家政治を展開、権力機構の二重構造)を創った源頼朝。中堅官僚プロジェクトの元祖、石田光成。手続きをちゃんとすることで責任のがれをする「ちゃんとイズム」の石門心学の石田梅岩。「財界」という欧米にはないカタマリを創った渋沢栄一。そして、池田隼人、マッカーサーなど12人が登場する。
本書の結びには、「いくつかの点で、日本を創った12人を超えなければならない」としている。
自分を作った12人は誰か・・・親に始まり、いろんな人のどんな影響をうけてきたのか書き出してみるのもいいね。感謝を込めて。
過去、現在、未来は、ずっとつながっているし、すべてのことに意味があり、これからも意味がありつづける。多分、感謝という気持ちがあらゆることを価値あるものにしてくれる触媒となるような気がする。
★★★★★+歴史を引きよせる
・歴史が好きな方
・時代を動かした人物に興味ある方
・ユニークな視点が心地よい方