そんなことできるの?
世界の動きをどういう視点で眺めるか・・というのは、モノゴトの判断をする上で大事なことだ。
今、ここでアメリカという存在を抜きに、あるいはアメリカ的思想を抜きに考えるとすれば、それはあまりにも無謀なことのように思える。
しかし、2001年の9.11テロ以後、パックス・アメリカーナ(米国覇権)は揺らいできた。これは「アメリカの正気を怒りで失わせ、アフガニスタン、イラクと続いて狂気の戦争の引き金となる出来事であった」という。世界秩序のパラダイムを壊し、新たな混迷の到来を暗示した。
著者は、戦後民主主義の落とし子として横浜で育っだ。民主主義と人権主義こそ正義の源泉であると信じてきた著者は、東西冷戦構想の崩壊後、その価値観に疑問をいだく。アメリカの覇権が、様々なものを押し込め、飲み込み、横暴な行為をするのを目にした著者は、「非覇権主義」という考えを模索するよう
になる。
ハワイの合併、イラン・コントラゲート事件、イラク戦争などを紐解きながら米の覇権拡大の様子を解説する。また、ヨルダンのハッサン王子、南アのデ・クラーク元大統領、チェコのハヴェル前大統領など、非覇権主義の人たちの言動をルポしている。
覇権主義と非覇権主義を二項対立的に論じているというよりは、むしろそれらの相互作用や中庸的なものを模索しているようにも見える。
世界を一色に塗り替えるという覇権主義ではなく、いろんな色が理解しあい、協調できる多文化主義や非覇権を是とする「もうひとつの世界」にむけた胎動が感じられる本である。
世界で起きるニュースを目にするとき、その裏側に流れる潮流に目をむけるきっかけになる本かも・・・。
世界の人口が65億人を超えた・・・とニュースが報じた。この地球に住む人類がそれぞれの独自性を保ちつつ平和に暮らすにはどうしたらいいか・・・そんなことを考えるきっかけとなるニュースではないだろうか。
日々起こる様々な出来事に触れ、その深層や真実を見出すのはなかなか難しい。ライブドア事件にしても、永田議員のメール騒動にしても、メディアの情報をそのまま鵜呑みにしていると本質を外すことにもなりかねない。ニュースの裏側を見る目を、そして考える頭を養っておきたい。
★★★★+非覇権という考え
・世界情勢に関心がある方
・歴史がすきな方
・よのなかを見る目を養いたい方