あの世から考える・・・
人生最後の願い。残された家族へ託したいこと、仕事への思い、その他いろいろと遺言に残したいことがあるかもしれない。お墓はどうするか・・なんてのそのひとつかも。
まだお墓に入る年じゃない・・・? うん、それはわかるけど、人生の長期プランを描くならこういうこともちょっと考えておこう。
さて、本書は、お墓のガイドではない。お墓に入りたくない人、入れない人のための「お墓以外」のガイドである。
実はお寺や霊園にあるようなお墓や墓石以外にも、ずいぶんといろんなやり方があるという。一番よく聞くのは、「散骨」(自然葬)である。火葬後骨をひろって細かく砕き海や森に散骨するものだ。ほかにも樹木葬(骨を埋めたところに樹木を植える)、手元供養(家の中やデスクの上における小さなオブジェやペンダントに遺骨の一部を納める)などもある。さらには宇宙葬、月面葬、インターネットのお墓・・などもある。
本書は、こうした世の中の動きを具体的に解説し、従来の葬式、お墓、お寺、儀式・・といったものにとらわれない動きをルポしている。お墓といってもななか奥が深いですなぁ。
核家族化や家族の個人化が進み、血縁に対する考え方もずいぶん昔と違ったものになってきた。都市に移り住んだ家族は田舎のお墓に関心が薄れたりして、従来のお墓との関り方を変えざるをえない状況もある。
著者は、お墓を否定しているわけではなくひとつの文化と認めつつ、葬送の自由がひろがり新しい葬送文化ができることを期待している。
親や自分のお墓のことがふと気になった方、ちょっと読んでおくといい本。
意外に知らないことが多いことにビックリ。たとえば・・
従来のお墓を用意する費用だが、東京ではなんと400万円くらいかかったりするとか。(ひぇー)
四角い柱のお墓は、実は神道式だったとか。
昔はお葬式もお墓も仏教とは縁がなかったとか。
(仏教宗派のうちでも華厳宗などの南都六宗では今でも葬式をやらない)
(きっかけは江戸時代、キリスト教排除のために檀家制度を設けたこと)
世界の中で火葬の比率は日本がダントツ(ほぼ100%)。イギリスが71%、アメリカが25%、トリノ五輪のあったイタリアは5%だという。
いろんなことを知る機会を利用して、自分はどうしたいか・・・なんてことを家族と話し合ってみるのもいいね。
(著者の徳留さんとは、1/19の100冊の本記念交流会でお目にかかることができました。感謝。)
★★★★+文化としての葬送
・お墓について考えたい方
・葬儀に関心ある方
・親や自分が死んだときのことを考えている方