一新=オール・クリア
「あなたは、お金もうけとお金儲けをする人の手伝いばかりしてきて、社会に対して何をやってきたのですか? あなたの人生に社会性はありますか?」
これは、マッキンゼーで輝く実績と名声を残した偉大なコンサルタント、大前研一さんが、奥さんのジニーさんから言われた言葉だという。
この一言が大前さんの人生を「アールリセット」させた言葉だという。プライドも財産もすべて投げ打って「平成維新の会」を立ち上げる。92年のことだ。そのころの大前さんの著作は、「新富国論」「世界の見方、考え方」「平成維新」などがあり、世直しの政策提言が数多く書かれている。最近ようやく盛り上がってきた道州制もこれらの中に入っている。
しかし、その後の結果は、うまくいかなかった。本を書いてもダメ、人を選挙に送り出してもダメ、自ら飛び込んでダメ・・としがらみで身動きのとれないこの国で、世界的なコンサルタントは大きな蹉跌を踏むことになる。そこで、気付いたことは「急がば回れ」ということだったという。
で、できたのが、一新塾という市民活動の母体である。94年に大前研一さんを創設者とする次世代リーダーの養成学校が誕生。ビジネスマン、主婦、経営者、サムライ業の人などが集まり、「政策提言」「社会企業」「市民プロジェクト」などを草の根的に議論し、実行する集まりである。
本書は、その11年の記録である。市井の人が、真剣に議論し、実行し、成果と影響を与え続けてきた熱い記録である。決して「大前塾」ではなく、そこに集まる人達が主役だというところが何よりすごい。
投票率をあげるため「投票すると商店街の買い物がお徳になる」企画を進めた吉金大輔さん、 ( http://www.senkyosale.com/ )年間7千万の赤字に苦しむグリーンピア土佐横浪を民間受託で黒字再生させた深田智之さん、サラリーマンから地域社会に転進して「つなぎ屋」になった真保俊治さんなど、多くの一新塾卒塾者の活躍が紹介されている。
本書に登場する人は、大前研一さんのような世界的に有名な人は一人もいない。市井の人、となりの席にいるサラリーマンの仲間・・・そんな人たちである。それが、連携し、議論しあい、いい国を作ろうという意気に燃えて社会起業家として活動している。この活動が世の中を大きく創造変革するには、さらに発展が必要だが、その動きは大いに注目したい。
熟年、団塊世代といった人たちが、こういうところにも目を向け、世の中を変えるムーブメントになることを期待したいね。
これもまた、ロングテールの法則っぽい。大前さんは、恐竜の頭、ずずーっとながい(1億人)のシッポのほうは、これまであまり力を持たなかったが、つながり主張し活動することでパワーを持ち始めてきた。つながるためのツール(ネット)が格安で常時接続になってきたことも一つの要因。草の根が草の根のまま終わるのではなく、気が付いてみたら、日本中にきれいな花が咲いていた・・・みたいなことが起きそうな気がする・・。
一新塾はこちら: http://www.isshinjuku.com/
★★★★★+ALLクリア!
・社会に役立つことを始めたいと考えてる方
・NPOに興味ある方
・世の中に新しい風を吹かせたい方