対照的なふたつの会社
一時期、隆盛を極めたカネボウは凋落してしまった。地道に技術立国を進めてきたキヤノンは、御手洗さんが経団連会長まで出すほどの優良企業になった。
前者は文系、後者は理系。(という対比はふさわしくないかもしれないが)
この対照的なふたつの企業で、仕事をしてきた著者が、その両社の社風や経営を社内からの目線で書いた本である。
あ、うちもあるある・・・そういうところ・・という官僚的なところ(カネボウ)、わが社の経営陣もまねしてほしいよなと思えるキヤノンの社風、そういうものがリアルに伝わってくる。
全国に鐘紡という名前の町が3つもあるとか、皇室のご訪問をたびたびうけたとかいうかつての名門カネボウは、みるかげもなくなってしまった。それは、経営者の責任でもあるが、微妙な空気や場の雰囲気が違っただけで結果は大きく違ったのではなかろうか。
カネボウは「人事」株式会社と社内ではよく言われたそうだ。これは、人事労務畑の出身者でないと出世できないという意味。露骨な慶応閥、官僚的な風土・・・どこかで聞いたような・・というビジネスパーソンもいるかもしれない。
著者は、そんなカネボウの栄枯盛衰のなかで、繊維部門や化粧品部門でマーケティングに力を発揮するが、95年の大量リストラを契機に見切りをつけ退職する。そして仕事でつながりのあったキャノンから入社の要請をうけて新天地へいく。
後半は、堅実なキヤノンの社風、毎朝8時半からの役員朝会、社長も社員食堂で列に並ぶ・・などキヤノンの雰囲気が活写されている。
団塊の世代の方は、社歴20数年という方が多い。ほとんどは転職なんて考えなかった時代だから、当然である。そんな中で、自分と会社の歴史を書いておくのも面白いね。自分史で終わるか、そこから何かの知見を見出し、本になるか・・・それは、未知数だがやってみる価値はありそうだ。
対照的なふたつの企業で働くというのもなかなかできない経験。
経験は宝物。そして、宝物になるような仕事ぶりも必要だねぇ。
★★★★+明暗を分けるもの
・会社をやめたいと考えてる方
・キヤノンに興味ある方
・カネボウに関心のある方