読んで分ったその知恵の、その奥に感じるものこそ・・・
田坂広志さんの1997年の作品である。ほぼ9年ほど前に書かれた複雑系の本である。サンタフェ研究所などで研究された複雑系とはなにか・・・それを説明するための解説書ではない。そこには深い思想と哲学の世界がある。
今、私たちが生きているこの世界、宇宙、地球、日本、社会、会社、家族、自分・・それは宇宙の進化と複雑化の中で絶妙なバランスをもって存在している。
それは、人間が「科学」と称して分析や統合してきたごくわずかな智慧では、はかりきれない複雑な系として存在する。
複雑系の中にあって、私たちは今、インターネット革命という新たな進化のプロセスを体験している。その深層を7人の賢人(ポエット、インキュベーター、ストーリーテラー、アントレプレナー、セラピスト、ゲームプレイヤー、アーティストの7人)にたとえて解説したのが本書である。
今回、僕の心に響いた智慧はこれ。田坂さんのレジュメを真似てキーワードを拾い出してみた。
◎インキュベーターの知
20世紀は「管理」のパラダイム
管理型社会変革から創発方社会変革へパラダイムが変わる。
インターネットの3つの革命(情報バリア、草の根メディア、ナレッジ・
コミュニティ)
個の自発性が全体の秩序を生み出す
万物、自ずから然り
◎ストーリーテラーの知
創発という言葉は、自動詞であって他動詞ではない。
オープン ダイナミック ポジティブフィードバック
情報共有から情報共鳴へ
言霊=生命力をもった言葉 ビジョン
物語 癒し 信じる力
◎アントレプレナーの知
ゆらぎ 起すものから起きるものへ
革命という言葉から進化という言葉へ
摂動敏感性
摂動=ゆらぎ、敏感性=部分の小さなゆらぎによって
全体は大きな変動を生じること
イントレプレナー
権限の壁 組織の壁 情報の壁
仲間を巻き込んでいく「共鳴力」
組織の総合力ではない、個人の共鳴力である
本書には「なるほど!」という知恵のエッセンスがいっぱい。しかし、それを理解することはさほど重要ではない。それを理解し、心の奥で感じたもの、自分の経験と知識の総てに照らして浮かび上がってきたものこそが、本書で得られる「素敵な何か」だと思う。
そういうひらめきがたくさんある本だ。
本書には1977年の田坂さんの素敵な横顔(写真)がある。その見つめる目線の先に、エネルギーに満ちあふれるものを感じるのは僕だけだろうか・・。
あなたは世界であり、世界はあなたである。
あなたが癒されるとき、世界も癒される。 (クリシュナムルティ)
この言葉の静けさのなかに、複雑系としての世界は、
ただ永遠に、我々を見つめているのである。
と結ばれている。うーん・・・・深い。
今日の本と、きのうの本は、あすの100冊倶楽部で、誰かの手に渡り、そこでまたちいさなゆらぎのもとになる予定。
その先の未来はわからない。でもとっても素敵な未来に違いない。
★★★★★+ゆらぎ
・複雑系に目覚めたい方
・複雑系に興味ある方
・今を大切にしたい方