蹴った犬の行動?
冒頭、「蹴った石の軌道は計算できるが、蹴った犬の行動は計算できない」というグレゴリー・ベイトソンの言葉が紹介されている。
多くの企業は、何かの制度やシステムを導入する時、軌道計算どおりに組織が動いてくれるだろう・・という仮説に期待をかける。うまくいく場合もあるが多くは形骸化することのほうが多い。業績評価制度とかMBOとか・・・。このごろ流行のコンプライアンスというのも、最もこれ(計算どおりにいかない行動)に近い。
すべてを計画し、管理し、統制することはできない。だから、コントロールすることをある段階で手放し、状況に委ねる・・・そんなやりかたが紹介されている。組織や個人が、自ら考え自律的に行動することを自然な形で支援する、そんな風土が望まれている。組織ファシリテーターの出番だ。
本書は、いくつかの矛盾や問題を、二律背反的(直線的)に考えるのではなく矛盾や問題を面でとらえ止揚(アウフヘーベン)する方法を示唆する。
二軸のマトリックスで考えることは、そういう意味もあったのかと、とても深く気持ちをゆさぶられた。
個人が大事か、組織が重要か
想像力か、実現力か
自発的に任せるか、強制参加させるか
標準化すべきか、個別対応すべきか
好きな仕事か、責任ある仕事か
顧客の感動か、自分の納得か
などなど、線上で右か左かを考えたり、あるいは、どこかでバランスをとって落としどころを探るのはよくないという。そうではなく、これらの矛盾(軸)を2軸にしたマトリックス上で、止揚する方向を探るべきというのが著者の考え方だ。なるほど!
西洋医学か東洋医学かではなく、それらのいいところを融合するようなコンセプト、それが求められているのかもしれない。
Organization Developmentを組織開発ではなく、組織発展と解釈し、コーチングやファシリテーションの目指す先を見せてくれる。ものごとが創発的に変化しはじめるきっかけをつくる、それが組織発展のためのファシリテーションというわけである。問題解決は、やはりその当事者が行うべきことなのだ。
とにかく、たくさんの刺激が満載の本である。
ブラジルにある超優良企業、セムコ社。ここは、およそ管理というものがない不思議な会社。人事部も組織図もないといからすごい。3000人もいる会社にも係わらず・・・である。組織が、自律的に動き、管理という間接業務をしなくてもすんじゃうというからすごいことだ。組織の当たり前が180度逆転している。
いまいる会社、組織のあたりまえは、ほんとうにそれでいいのか・・・ふと考えてみるのもいいね。
そして、できたらこんな組織(会社)になっていきたい。
この会社(チーム)にいてよかった。
自分の力を100%、いやそれ以上発揮できる。
私はひとりではない。大きなことに貢献している。
自分ひとりではとうていできないことを実現している。
メンバーがそんな気持ちで取り組める環境を、つねに考えて生きたいものである。
★★★★★+面で考える
・チームを元気で愉しいものにしたい方
・誇りと楽しみをいっしょに得たい方
・WOWとJOYのある組織にしたい方