夏目漱石の代表作「坊ちゃん」。原作を読まれていない方も、赤シャツだの、山嵐だのが登場する物語のことを知っている方は多いはず。
本書は、その現代版。昭和39年(1964年)10月東京オリンピック開催で盛り上がっている日本に、坊ちゃんの登場人物がタイムスリップで現れる。先生だった坊ちゃんは、新大阪から東京に向かう新幹線の中で居眠りしていた男に乗り移る。使用人のキヨ、先輩の数学教師だった山嵐、密かにあこがれていたマドンナなどが、それぞれ異なる人物で登場する。設定はビジネスマンだったりするが、性格は同じ。またもといた時代のこともよく覚えている。
坊ちゃんの時代と、現代が微妙に溶け合って、非常に面白い展開をする。
本書は、起業編。昭和から時代が進み、トラックボール(マウス)やウィンドウズなどのちょっとした歴史も垣間見ながら物語りが展開する。楽しい。面白い。読みやすい。
本書の背景には、「漱石の文学の中には、日本人にしか理解しがたい“ゆらぎ”や価値観などがあるのではないか」という著者の思いがある。もういちど日本人のアイデンティティを認識しようというわけだ。
第二部の事件を匂わせて物語は終わる。早く第二部が読みたいものだ。
心にのこる物語や歴史の人物を、現代に置き換えて仮想物語をつくってみるのも楽しい。
タイムスリップの仕方をいろいろ考えると楽しいね。本書では、ある英国紳士がもってきた夏目漱石の原稿だという資料が、そらに舞い上がり時空のすきまにはいってしまうという設定だった。
雷がおちる。
竜巻がおきる。
隕石が落ちる。
大停電が起きる。
・・・・ほかには、どんなのがあるだろうか。
★★★★★+タイムスリップ
・坊ちゃんが好きな方
・夏目漱石をよく読んだ方
・よくタイムスリップうする方