夜陰に乗じ、霧にまぎれて・・・
以前から、この本は読まなくては・・・と思っていた本である。ヴィクトール・フランクルの名前は、田坂広志さんの講演の中で、はじめて耳にした。以来ずっと心にフックしていた。
本書は、精神医学を修めた著者が、運命のいたずらに翻弄され、ナチスの強制収容所に収容されたときの記録である。
壮大な地獄絵ではなく、おびただしい小さな苦しみを描写した・・・とある。決しえて小さな苦しみではない。人間の尊厳をとことん否定し、感情もなくし飢えと寒さの中での強制労働・・・そこでは尋常な精神構造ではいられない。
しかし、それでも人間は順応し、また最後の尊厳をも保とうとする不思議な力も働くのだという。
番号1190104という番号だけの意味しか与えられない強制収容所とは、どんなところか・・・
正常な感情の動きはどんどん息の根を止められる惨状の中、どうして人間でいられるのか・・・・
自由を奪われ、心が麻痺してもなお・・・たったひとつ残されたもの。それは、「与えられた環境でいかにふるまうかという、人間としての最後の自由」だったという。
本書は、かなり重いものを記述しており、心してかからないといけないかも。
人は、いろんな場面で、自分そのものを試されるような瞬間がある。
ごく小さなことでいえば、やっとのことで座った電車に、老人がはいってきて目の前に立つ。うーー・・せっかく座ったのに・・・、寝たふりするか、それ
とも・・・。
こんな瞬間も、自分は何かの選択権が与えられている。そして、そんな蓄積の中で、自分自身を形成していく。
強制収容所ではないけれど、私たちにも「環境に応じて選ぶ自由」が与えられそれは、日々私たちを試す場になっている。
どう生きるか・・・。すぐそこにある現実の中で、私たちは自分自身を選べる瞬間と向き合っている。
★★★★★+最後の自由
・素敵に生きてきたと思いたい方
・いつも誇りを感じていたい方
・極限状態を覗いてみたい方