ようやく、時代が天外伺朗に追いついてきた!?
本書は、かつてSONYの中で存在していた「燃える集団」の背後にあった“何か”を経営論的に洞察した衝撃的な本である。著者の天外さんは、本名を土井忠利さんという。元ソニーの上席常務。CDの共同発明者、ワークステーションNEWS、ロボットAIBOの開発責任者を務めた方である。
主にアメリカから導入された様々な経営手法は、大きな誤解のもとに構築されてきたという。たとえば成果主義やMBOなどだ。さて、その誤解とは・・
組織や人間は、合理的な存在だ、本来合理的に動くはずだ。
ということである。このごろはとんと羽振りの悪い「成果主義」。報酬を業務の成果に直接リンクすれば、社員はよりよい報酬を求めて一層がんばるハズだ、という仮説に基づいている。その検証結果は、多くの企業でNGと出た。それは「虚妄の成果主義」や「内側からみた富士通」などに詳しい。
競争状態の維持こそが、活性化の原動力だ
という考え方も、そうかもしれないと思いつつ心の奥底では、なんかヘン・・と感じていたはずだ。(それを著者は、ヨコシマな動機と喝破している)
これらは、すべて論理と理性、合理主義的な考えがベースになっている。しかし、結果は必ずしも合理的な論理どうりに人間は動かなかったということだ。
健全な組織は、合理性では割り切れない目に見えないシステムが随所に
機能しているものだ。
という。それを本書では「長老型マネジメント」と呼んでいる。徹底的に部下を信頼し、受容し、サポートする。上司は「空気のような存在」である。安心して逆らえる上司である。決定権限が現場にある。など長老型マネジメントはどこか古きよき日本の社会や、インディアンの社会を想起させるものだ。
そんな組織では何がおきるか・・・。フロー状態、燃える集団、面白くてたまらないというノッてる状態である。これは、合理主義に則ったシステムではうまれえないものだ。
本書から、新しい経営の地平を覗いてみよう。
僕にはとっても衝撃的な本だった。多くの企業が取り入れたマネジメント手法手法になんとも表現しがたい違和感を覚えていた。その、うすうす感じていた「なんかヘンだ!」は、そういうことだったのか!と深い納得を感じられた本だった。
BSC(バランス・スコアカード)のキャタリストを名乗っていた僕は、講演などをしながら、何かもの足りないものを感じていた。そして、それをやや曖昧かつ微妙な言葉で補っていた。この本で、それが何だったのか、はっきりと見えた気がする。(そのことをお話するのは、6月、福岡の大津留塾が最初になる)
フロイト(理性至上主義)からユング(無意識を高い存在とした)への転換
外発的報酬から内発的報酬へのシフト
意識的から無意識的への注目
新皮質的から旧皮質的へ
といったパラダイムシフトが、経営の世界にもようやく登場してきた。いままでの合理的なものごとに全てを委ねてきたマネジメント手法が大きくゆらいでいる様子とこれからの未来を拓いてくれる本である。
そういえば、僕も経験したフロー状態にも、長老型マネジメントの上司(N課長やI先輩)が存在していた。(思えば、あれは貴重な体験だった!)ジェイカレッジや、100冊倶楽部のプロジェクトも、ある意味、そういうフローな状態があったのかもしれない。
これまで多くの人や企業が信じてきた(いや、どこかに?を持ちつつ、自分をあわせてきた)やり方は、ここで大きな転換期を迎えている。
本書が、世界に向けて経営学の新しい波を発生させることを祈りたい。
★★★★★+管理型から長老型へ
・管理されたくないという方
・組織をなんだかノリノリにしたい方
・フロー状態で仕事をしたい方