裁判官も人の子である・・・
2009年から裁判員制度がはじまる。もしかすると、あなたも僕も、裁判に直接係わることになるかもしれない。
http://www.moj.go.jp/SAIBANIN/
ところが、私達は一般には裁判所なんていったことがない。裁判の傍聴なんてのもできなくはないけれど、忙しい中わざわざ足を向けるほどではない・・というのが普通だ。
裁判所の中では、裁判官がファシリテーターと判決者というのを勤めるんだけれど、そこには、法というデジタルな世界と、心情という人間的な世界の葛藤がある。当然といえば当然。裁判官も人間なのだから。
本書は、裁判を傍聴した著者が、判事と被告人の間にながれたビミョウな空気を切り取って、面白おかしく、ときに感動的に紹介した本である。
たとえば:
死刑はやむをえないが、私としては、
君にはできるだけ長く生きてもらいたい。
といった一見、矛盾した説諭は、笑えなくもないがその裏にあった裁判官の思いは、「遺族に謝罪を続けていってください」というものだった。
また、静岡地裁での某陪席裁判官のひとこと
刑務所に入りたいのなら、放火のような重大な犯罪ではなくて
窃盗とか他にも・・・
と思わずつぶやいたそうだ。なんだか裁判官殿、大丈夫?と思ってしまうが、実はこの背景にはこんな事情もあるという。食事も出るし、雨露もしのげ寝床もある、医療費もただの刑務所がバラダイスのように思えるヘンな輩が、結構多い・・・らしいのだ。
また、求刑の8割・・が量刑相場として通用している司法業界にあって、検察の求刑が軽すぎるとして懲役を2年上増しにした杉田判事の話は、泣かせる。育ち盛りの二人の子どもをもつ母親が、家出した夫の借金まで抱え込み、追い詰められた末に万引きを繰り返していた。その母親への判決のあと・・・・・
閉廷後、一段高い裁判官席から身を乗り出し、被告人の手を握りながらいった言葉・・・
もうやったらあかんで。
がんばりや。
裁判官に励まされた被告人は、その場に泣き崩れたらしい。
法廷にはドラマがある。
裁判員制度も知らないうちに始まっちゃうらしい。忙しいビジネスマンも母親も基本的に時間を捻出しなくてはいけなくなる・・・・。どうして誰も意義を唱えないのか・・・。
裁判というものを、ドラマの世界ではなく、リアルな実社会として覗くいいきっかけになるかも。
裁判の傍聴・・も、一度くらいやってみるのも、いいかもね。知らないものは、語れない、から。
★★★★+判事席
・裁判に関心ある方
・裁判官も人の子だ・・・と安心する方
・裁判を見てみたい方