・ ・ ・ 間 ・ ・。
間、とは何か。
講演でも会話でも、一瞬の沈黙が雄弁に何かを語りかけたり、その場の流れに重要な意味をもつ時間だったりする。その瞬間、人の心の中で、何かが変化する、そんな一瞬を「間」というのだろうか。
本書は、イッセー尾形(一人芝居)と二人三脚を10数年もつづけてきた著者が、舞台や日常生活、そして仕事場などにおけるコミュニケーションの本質を「間」という瞬間を通じて語っている。
間というのは、一人ではできない。誰かとコミュニケーションしているときに生じる。自分がしゃべりまくって何かを伝えようとしていて、一瞬、間をとる。その瞬間は、相手にすべてを委ねる時間。
本書では、「4日間の稽古で有料の講演を行う」というワークショップが紹介される。「舞台に出るのは地元の素人が対象」というインチキ臭い企画に、全国8箇所の公共施設から賛同が上がったという。意表をついたワークショップは、なかなか面白い。
また家庭内は、「沈黙」と「間」が基本という考察も興味深い。
相手が真剣に聞かないから、遠慮のない話ができるのが身内だ。
「話を聞かない態度」と「聞いてくれない話のできるありがたさ」のふたつ
に支えられて、身内の親密さは成立する。
という。あはぁ~、確かに!
なにげなく交わしている会話、会議、団欒・・・・そこにあるコミュニケーションの真実をさまざまなテーマで語っている。何かを感じられる面白さが、本書にはある。
そういえば問いという字は、間という字から一を引いた漢字になってるなぁ。
一瞬、沈黙して時のエネルギーのすべてを相手に委ねる。それが間だとすれば問いは、あらかじめエネルギーの方向性を規定して委ねる。そんな違いがあるのだろうか。
間とは、引きも押しもせず、自然にまかせるユーモードの姿勢
問とは、こちらから押しあとに返ってくるのを待つ、アイモードの姿勢。
どちらも一瞬の沈黙の後に何かの言葉が続くことになるが、後に残る余韻の色は違うような気もする。
今日の本は、なにか聞き流す(読み流す)間に、なにかのケミストリーを誘引するような面白い雰囲気がある。
★★★★☆+間。
・見えないものを見るのが好きな方
・沈黙は金、という方
・雄弁こそ力、という方